2021年4月23日


Date: 16:00 – 18:00, Friday, April, 23, 2021

日時: 2021年4月23日(金)16:00 – 18:00

講演者: 高久 侑己

Speaker: Yuki Takaku

タイトル:ジピコリン酸を用いたMALDI-TOF-MSによる90Srの迅速分析法の開発 ~ジピコリン酸とSrイオンの相互作用解析~

Title:Development of rapid analytical method of 90Sr by MALDI-TOF-MS using dipicolinic acid  ~Interaction analysis between dipicolinic acid and Sr ion~

2011年の東日本大震災に伴う福島第一原発事故により膨大な量の放射性物質が環境中に拡散された。この事故では多くの放射性核種が放出され、中でも137Csや90Srは半減期が約30年と、長期にわたる環境汚染が懸念されている。これにより、例えば半減期28年の90Srは、Caと同族元素であるため人間が摂取すると骨に取り込まれて悪性腫瘍の原因となる場合もある。半減期の長い放射性核種の中でもβ線のみを放射する90Srの検出には公定法で1ヶ月以上の期間を要するため、東日本大震災時には現場の必要に応じたオンデマンドな90Srの分析を行うことができなかった。そこで、千葉ら1)は茨城県の特産品である納豆に多くに含まれているジピコリン酸(2,6-Pyridinecarboxylic acid, dipicolinic acid, DPA)をマトリックスとして用いた、「迅速、簡便なジピコリン酸MALDI質量分析法による90Srの分析法の開発」を開始した。通常の質量分析法を用いれば、同重体である90Yや90Zrを区別して測定することができない。「ジピコリン酸MALDI質量分析法」は、DPAマトリックスとの親和性の違いを利用して、これら3種類のイオンをイオン化の段階で分離しようとする手法である。しかし、MALDI質量分析で試料を効率よくイオン化させるマトリックスの選択方法は経験的で、マトリックスと各イオンがどのような複合体を形成すると試料が効率よくイオン化されるのかというメカニズムは明らかとなっていない。「ジピコリン酸MALDI質量分析法」でも、Srイオンは観測されるが、YイオンやZrイオンはピークが観測されにくいという結果が得られており、その理由は明らかになっていない。

 そこで、1H-NMRを用いてDPAと88Sr2+89Y3+90Zr4+の各イオンの相互作用を調査し、その理由を解明しようと試みた。その結果、DPAとSr2+はモル比が1:1でシンプルかつ解離会合しやすい複合体が形成されることが示唆された。一方、Y3+とZr4+はDPAと多量体を形成する傾向にあることが示唆された。MALDI質量分析法でイオン化効率の良いマトリックスは、イオンとコンパクトな複合体を形成し、気化した後にイオンと解離しやすい分子種である。コンパクトで剝がれやすい複合体を形成するほど、レーザー照射の際にDPAとイオンが解離しやすいためイオン化しやすく、これがMALDI質量分析法にてSr2+が検出されやすかった理由ではないかと考えた。

 1)    千葉薫、小林正記、公開特許 出願番号 2012012857


講演者: 村上 喬紀

Speaker: Takanori Murakami

タイトル:  核化性能に対する酢酸ナトリウム 三水和物水溶液の濃度及び引張ば ねの外径の影響に関する調査 

Title : Investigation of the concentration of Sodium Acetate Trihydrate and the diameter of spring on nucleation efficiency


エネルギー問題は資源に乏しい我が国において長年火急の課題であるが、約6 割の一次エネルギーが未利用熱エネルギーとして排出されてしまっており、こうした未利用熱を有効的に活用する技術の開発が必要とされている。今回そんな未利用熱エネルギーを活かす技術として蓄熱技術に着目し、蓄熱材としての利用が期待できる酢酸ナトリウム三水和物に焦点を当てた。酢酸ナトリウム三水和物は潜熱蓄熱材として利用できる物質であり、過冷却状態でも安定であることから床暖房などでの利用が期待できるが、機械的な核化手段が未だ確立されていない。そこで、引張ばねを用いて、ばねの湾曲による核化手段の検討を行い、酢酸ナトリウム三水和物過飽和溶液を効率的に核化できる濃度及び引張ばねの外径を模索した。