2017年9月22日

発表者:斉藤綾花(Ayaka Saito)
題名:中性子小角散乱法による小麦グルテンの構造解析
Structural analysis on wheat gluten by SANS (small-angle neutron scattering) method

要旨:麺類やパンなどの小麦粉製品の製造において、製造プロセスは製品の食感や風味に大きな影響を及ぼす。小麦粉製品には、グリアジンタンパク質やグルテニンタンパク質などが含まれており、中でもグルテンというタンパク質が最も重要な役割を果たしている。グルテンは小麦粉に加水しグリアジンとグルテニンが相互に絡み合うことで、粘弾性に優れた網目構造を形成する。近年、蛍光染色観察法によりグルテンとデンプン粒の分布をμmオーダーで観察することに成功した(前田, 2016)。
中性子小角散乱では散乱角の小さな領域で観測される散乱強度を調べることで、ナノスケールからミクロンスケールまでの構造解析が可能である。この方法を用いてグルテンの網目構造についてnmからサブμmの構造情報を明らかにすることで、グルテンの網目構造と粘弾性特性の関連を考察することが可能になると期待される。今回、小麦中のグルテンの構造を中性子小角散乱により評価したため、その結果と考察および今後の方針を報告する。

発表者:古村俊行(Toshiyuki Komura)
題名:高温高圧下での含水炭酸塩とケイ酸塩の反応
Reaction between hydrous carbonate and silicate under high pressure and high temperature conditions

要旨:海洋底に堆積した生物遺骸などを起源とする炭酸塩堆積物は、沈み込むプレート境界において、スラブと共に地球深部へと運搬されることが知られている。沈み込んだ炭酸塩が、地球深部でどのような反応を経て炭素を運搬するのかを考えることは、地球深部での炭素の量を見積もるうえで非常に重要ある。Isshiki et al., 2004では、magnesite(MgCO3)が地球深部においても安定であり、炭素の主要なキャリアとなりうることが示された。また、Ohfuji et al., 2016ではダイヤモンド中の単独のpericlaseインクルージョンはmagnesiteとC-H-O流体の反応産物であることが示唆されている。そこで本研究では、そのようなC-H-O流体及び沈み込んだ炭酸塩が、マントル構成鉱物とどのような相互作用をしているのかを、LH-DAC(レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル)を使用した高温高圧実験によって調べることを目的とする。本実験の出発物質は含水炭酸塩(nesquehonite)および天然のolivineとした。LH-DACで含水炭酸塩を扱うために、圧力媒体、およびレーザー加熱の断熱材としてアルゴンを試料室内に充填するシステムを準備し、CO2レーザーを用いて試料を加熱した。最終的には下部マントル上部の圧力を目標としているが、今回は予備的な実験として行った上部マントルの温度圧力条件での実験について報告する。