2018年7月6日

Date: 16.00am-18.00am, Friday, 6 July 2018
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker: Ko Fukuyama

日 時:2018年7月6日(金)16:00~18:00
場 所: 化学本館3階講義室
講演者:福山鴻

講演者(Speaker) : 福山 鴻 (Ko Fukuyama)
タイトル:高温高圧実験による下部マントル主要鉱物への窒素の取り込み
~鉄を含んだブリッジマナイトへの窒素取り込み量の検討や今後の予定~
Title: Incorporation of nitrogen into the lower-mantle minerals from high pressure and high temperature experiments
~Investigation of nitrogen incorporation into Fe-bearing bridgmanite and future plan~

窒素は地球大気の約8割を占め、生命の必須元素である。このため、初期地球進化過程や地球の生命起源を議論するうえで、窒素は極めて重要な揮発性元素になり得る。しかし依然として、地球内部における窒素の挙動については詳細には理解できていない。例えば、コンドライトモデルから推定される地球内部の窒素量 (McDonough, 1995)に対して、天然試料の分析から見積もられる地球内部の窒素量は、他の揮発性元素の1/10未満であることが知られている (Marty, 2012)。この原因として、マグマオーシャンを経ることにより、上部マントル、マントル遷移層、下部マントルに窒素が貯蔵されている可能性(e.g. Li et al., 2013; Yoshioka et al., 2018)が示唆されてきた。しかし、地球で最も容量が大きい下部マントルでの窒素の貯蔵に関する先行研究(Yoshioka et al., 2018)は十分でなく、実験点が一点のみであること、鉱物に鉄のコンタミを多く含むこと、下部マントルと同等の酸化還元状態を再現できていないなどの問題点が存在している。
そこで本研究では、下部マントルの主要鉱物であるbridgmanite, periclaseそして stishoviteに窒素がどれほど取り込まれるか、27 GPa、1400 ̊C-1700 ̊Cの条件で高温高圧実験による検討を行った。実験には愛媛大学GRCのマルチアンビル高圧発生装置を使用した。下部マントル相当の酸化還元状態のコントロールにはFe-FeO bufferを使用し、サンプルに鉄のコンタミが少なくなるよう、金と白金の二重カプセルを採用した。急冷回収試料中の窒素の分析には大気海洋研究所のNanoSIMSを使用した。また、鉄を含んだbridgmaniteの鉄の化学状態を調べるため、KEKでXAFSによる分析を行った。
今回のセミナーでは、3月と5月に愛媛大学で合成した試料や今までの酸化還元状態を再現した高圧実験手法の試行錯誤について紹介する。加えて現在検討中であるbridgmanite中の鉄の存在状態と窒素取り込み量の関係や今後の予定についても可能な限り紹介する予定である。