2018年7月27日

講演者:斉藤綾花 (Saito Ayaka)
Title : Disorder of carbonate ions at room temperature and high-pressure behavior of Ba-doped calcite
タイトル:室温下でのバリウムを含むカルサイト中の炭酸イオンの無秩序化と高圧下での挙動

炭酸カルシウム(CaCO3)は堆積岩や生体鉱物として地球上に普遍的に存在している。炭酸カルシウムには常温常圧で安定なカルサイトと高密度相のアラゴナイトという多形がある。通常、Ca2+(1.00 Å)よりもイオン半径の大きいSr2+(1.18 Å)やBa2+(1.35 Å)はアラゴナイトには取り込まれやすいが、カルサイトには取り込まれにくい不適合元素としてふるまうことが知られている。しかし、準安定相である非晶質炭酸カルシウム(ACC : amorphous calcium carbonate)に不適合元素であるSrをドープし、カルサイトへ結晶化させることで、カルサイトの構造中にSr2+が取り込まれ、格子体積が増大することが先行研究で報告された (Matsunuma et al., 2014; 榎本 修論 2016)。本研究では、Sr2+よりもさらにイオン半径が大きく、より不適合性が高いBa2+のカルサイトへの取り込みを試み、最大で68.6 mol%のBaを取り込むことを確認した。また、得られたBa-doped calciteのXRDの結果より、カルサイト中で炭酸イオンの無秩序化が起こっていることが分かった。本セミナーではこの結果の他にBa-doped calciteの高圧下での振る舞いや今後の方針について報告する。

講演者:石山遼(Ryo Ishiyama)
Title: Optical selectivity in pressure-induced polymerization reaction of alanine
タイトル:アラニンの圧力誘起重合反応における光学選択性

アミノ酸は生体高分子であるタンパク質の構成分子であり、生体を構成するのに不可欠な分子である。アミノ酸は生命の起源にも深く関係しており、アミノ酸の地球上での合成や隕石による飛来の可能性が考えられている。地球・惑星の環境を模した実験も行われており、常温高圧下においてα-アミノ酸の一つであるアラニンがペプチド化することが確認されている。また、大多数のα-アミノ酸は鏡像異性体を有しているが、生体においてはL体のみが選択的に利用されている。どのようにしてL体のみが用いられるようになったのかも重要な問題である。
本研究では常温高圧化でのアラニンのペプチド化に際して、光学選択的に合成が進むかを実験的に測定することを目標としている。L-アラニル-L-アラニンとアラニンのラセミ混合物を混合した試薬を対向アンビルで加圧している。アラニンの鏡像異性体のうち片方を同位体置換したものを用いており、GC-MSでどちらが付加しやすいかを測定する。
今までの測定では、L-アラニル-L-アラニンに対してD-アラニンがより付加しやすいという結果が得られている。実験結果の妥当性を評価するための実験を現在進めている。ペプチドの合成法として一般的な固相合成法を利用し、生成物の標準試料の作成、高圧実験における反応との比較を進めている。