Date: 16:00-18:00, Friday, May 1st, 2026
講演者:松岡 友樹
タイトル:タンデム質量分析計を利用した脂質分子の構造解析
Title: Structural Analysis of Lipid Molecules Using a Tandem Mass Spectrometer
要旨:炭化水素の鎖を主骨格とする脂質は細胞膜の構成要素であると共に細胞内シグナル伝達に関与し、生体にとって必要不可欠な代謝物である。脂質の機能は分子の構造(炭化水素の長さ、二重結合の数、立体異性)に起因し、生体内での代謝メカニズムを考える上では、どのような構造も持つ脂質が組織のどの場所で顕在しているかを明らかにする必要がある。従来の脂質の検出法としてクロマトグラフィーを用いた分子構造ごとの分離と質量分析計による高感度検出(LC-MS)が主流であるが、この手法で検出できる脂質の情報は組織から均質化されたものである。組織上の脂質の局在情報を保持したまま分析するためには質量分析イメージング法が有効である。しかし、質量分析計が与える情報は質量(分子式)のみであり、構造に関する情報は得られない。この問題を解決するために、二つの質量分離を行うタンデム質量分析計があり、一つ目の質量分離で特定の脂質分子のみを選別し、分子をあえて壊して断片化させ、二つ目の質量分離で断片化した分子を検出することで、分子の構造に関する情報を取得する。断片となった分子から構造を推定するには測定者の熟練度が求められるが、本研究では周期的な質量を解析する手法であるケンドリック解析法を応用することで構造解析の糸口を与えた。発表では、基礎検討として構造が既知の脂質を分析し分子の断片から元の分子の構造を推定した事例について紹介する。
講演者:北川 朋玖
タイトル:高温高圧条件下におけるhcp-Feおよびfcc-Niへの炭素の取り込み
要旨:地球の内核は主に固体の鉄で構成されているが、その密度は内核条件下における純鉄の密度よりも小さいことが知られている(e.g. Fei
et al., 2016)。この密度欠損は、軽元素(鉄より軽い元素)の存在によるものだと考えられており、H, C, O, Si,
Sが主要な候補として挙げられている(e.g. Poirier
1994)。なかでも、宇宙における元素存在度が最大である水素は、高圧条件下で化学ポテンシャルが増大し、鉄水素化物FeHxが安定に存在可能となる。鉄の結晶構造中への水素の取り込みは、単位胞体積を大きく膨張させることから、水素誘起体積膨張と呼ばれ、これまでに多くの研究が行われてきた(e.g.
Machida et al., 2014, 2019)。
一方、炭素も鉄の結晶構造中へ取り込まれ、単位胞体積を膨張させると考えられている。しかし、先行研究で報告されている体積膨張の程度にはばらつきがあり(Yang
et al., 2019; Huang et al., 2022; Lai et al.,
2025)、炭素が鉄の単位胞体積に与える影響については未だ不確定な点が多い。
本研究では、高温高圧条件下において、hcp-Feおよびfcc-Niへの炭素の取り込みに伴う単位胞体積の膨張の程度を探ることを目的とし、高温高圧下X線回折実験をKEK,
PFAR, NE7AおよびSPring-8,
BL04B1にて行った。圧力発生にはDIA型ガイドブロックシステムを備えたマルチアンビル高圧発生装置を使用し、X線回折は2θ=6°のエネルギー分散法で測定した。
本発表では、炭素の取り込みによる単位胞体積の変化とその温度依存性に基づき、高温高圧条件下における炭素の挙動について議論する。