2026年5月8日

Date: 16:00-18:00, Friday, May 8, 2026

講演者:平田研究室 D2 松岡伊織

タイトル:誘電体バリア放電イオン源構造の改造とその検討
Title:Development and Evaluation of a Modified Dielectric Barrier Discharge Ion Source

要旨
法科学分野において、レーザーアブレーションハイフネーティッド技術は、その資料(・・)消費の少なさと高い空間分解能から微細証拠品の分析に活用されている。例えば、ガラスの異同識別において、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)を用いることで複数の微量元素の含有量を比較することによって、同一起源を有するか否かの判定が可能となる。ICP-MSは原理上元素分析のみが可能であるが、LAで有機分子の分析が可能となれば分析可能な証拠品の多様化が可能となる。
誘電体バリア放電イオン源(DBDI)は放電によって生じる非熱的なプラズマを介して有機物のイオン化を行うイオン源であり、質量分析装置との結合によってLAで生じたエアロゾル中の有機分子の分析が可能となる。現在平田研究室で使用されているDBDIにはフラグメンテーションの発生や化合物による検出の特異性が生じるなどの課題がある。
本研究ではDBDIの構造および電気的回路の変更によってイオン化の性質の向上を目指した。検討事項は①単管構造/二重管構造、②内部電極の接地の有無、③DBDIにおける放電に使用するガス種Ar/Heの3つである。実験の結果、内部電極の接地によってマススペクトルにおけるピーク強度が2~3倍に増加するという結果が得られた一方、フラグメンテーションの発生は抑止できなかった。また、構造の変更によって検出可能な化合物の特異性に変化が見られた。これらの結果を複合して、①内部電極の接地は化合物のイオン化効率の増加もしくは分解の抑止をもたらす、②特異性の変化は化合物に付与されるエネルギーの変化であるため構造のさらなる改良が必要と示唆された。

講演者:石野 好誠

タイトル:MOFコーティング櫛型電極を用いた腐食性ガス検出の試み

要旨:ガスの主要成分である二酸化硫黄(SO₂)は、化石燃料の燃焼や工業プロセスなどから発生する大気汚染物質であり、低濃度であっても人体や環境に影響を及ぼすことが知られている(World Health Organization.,
2006.)。さらに、SO₂は腐食性ガスとしても知られ、特に高湿度環境では水分と反応して酸性種を生成し、金属材料や電子部品の腐食を著しく促進する。このような腐食はppmレベルの低濃度でも進行するため、設備の信頼性維持の観点から、数ppmレベルでSO₂を高感度に検知する技術の開発が求められている(M.Özcan., et al. 2002.)。

近年、室温で動作可能なガスセンサとして、グラフェンなどの二次元材料を用いた電気的検出法が注目されている。これらの材料は高い比表面積を有し、ガス分子の吸着に伴う電気抵抗変化を利用して検出を行うことができる。しかし、水分や共存ガスの影響を受けやすく、選択性や再現性の確保が課題となっている(B.Wang., et al. 2022.)。

これに対し、金属有機構造体(MOF)は高い比表面積と規則的なナノ細孔構造を有し、細孔径や化学的性質を分子レベルで設計できるため、選択的なガス吸着が可能な材料として注目されている。中でもZIF-8はSO₂に対する吸着能と一定の耐久性を有し、さらに水中・室温で容易に合成可能であることから、センサ材料への応用が期待される(S.Bhattacharyya., et al. 2016.)。

一方で、腐食挙動は水分の影響を大きく受けるため、腐食性ガスと水分を同時に検出することが重要である。櫛型電極型結露センサは高感度かつ高速応答が可能であり、感応層の設計によってはガス検出への応用も可能であると考えられる(J.Kawakita., 2017.)。

そこで本研究では、櫛型電極型結露センサ上にZIF-8を担持し、SO₂に対する応答特性を評価することを目的とした。