2026年6月19日

Date: 16:00-18:00, Friday, June 19, 2026

講演者:鈴木 敏弘

Title : Metallic iron of the Earth (and solar system)
題名:地球(及び太陽系)に存在する金属鉄

要旨
 地球中心核では金属鉄が主成分(Fe-Ni合金)として存在しているが、地殻やマントルでは鉄は金属ではなく陽イオンとして岩石中に存在している。地表面には人工物の金属鉄が存在しているが、天然物としては隕石中に金属状の鉄が存在している。
 今回のセミナーでは、このような金属状態で存在する鉄に関連して、「隕石中の金属鉄」と「地球核中の軽元素」について、簡単に紹介したい。

1。隕石中の金属鉄
 多種多様な隕石が存在しているが、多くの隕石中には多少なりとも金属鉄(Fe-Ni合金)が存在しており、金属鉄を全く含まない隕石は少数派である。
 隕石は大別すると、全体組成が太陽系組成に近い「始原的隕石」と、地球のように岩石とFe-Ni合金が分離した「分化した隕石」に分けられる。始原的隕石の中で多数を占める「普通コンドライト隕石」の場合、普遍的にFe-Ni合金や硫化鉄が存在しており、多い場合には20Wt%以上になる。一方分化した隕石の場合、ほぼ全体がFe-Ni合金からなる「隕鉄」や、Fe-Ni合金とケイ酸塩鉱物が混在した「石鉄隕石」等がある。
 一般的に、隕石と地球の岩石を目視で区別することは簡単ではないが、全体が金属である隕鉄の場合には、一見して隕鉄と判断できる場合も多い。このため、火星探査車からの画像から、火星表面でも多くの隕鉄が発見されている。

2.地球核中の軽元素(水素)
 地震学的研究から求められている地球核の密度は、実験的に推定されている純鉄の密度よりも
1割程度小さい。このため、鉄やニッケル以外の「軽元素」が核中に存在している事により
核の密度が減少していると考えられている。
 核中に存在する軽元素としては、隕鉄中にも存在する硫黄や炭素等の元素が古くから考えられて来た。
鉄水素化物は高圧化でのみ安定で、常温常圧では鉄と水素に分解する。このため、その存在を確認するには高温高圧その場観察が必要であり、高温高圧実験試料の観察を急冷回収に頼っていた時代では、
鉄水素化物の存在を実験的に示すことは、非常に困難であった。このような状況から、
1970年代までは鉄水素化物の存在は知られてなく、水素が核中に存在する事は有り得ないと考えられていた。
 最初に鉄水素化物の存在を確認したのはAntonov et al.(1980)で、高温高圧で合成した鉄水素化物を、
液体窒素温度に冷却した状態で減圧する事により、常圧への回収に成功した。
その後、Fukai(1984)では地球形成過程で原始地球内部で進行する「鉄-水」反応によって、鉄水素化物が生成し、地球核へ水素が供給される事を示した。