プレスリリース

2021.6.24
地球形成初期、鉄への水素の溶け込みは硫黄に阻害されていた

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発表した鍵研のメンバー

飯塚 理子(特任助教(当時)), 市東 力(修士課程2年(当時)), 福山 鴻(博士課程3年(当時)),森 悠一郎(修士課程2年), 鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ 地球形成初期を模擬した高温高圧下での中性子回折実験を行い、鉄に取り込まれた水素の量を決定しました。結果として、硫黄の共存によって鉄の水素化が抑制されることが分かりました。
♦ 鉄を主成分とする地球コアに含まれている軽元素候補の中で、地球コアに水素と硫黄が溶け込む際の相互の影響を明らかにしました。水素と硫黄が地球形成の初期段階で優先して固体の鉄と反応した後に、他の軽元素が鉄に溶けこみやすくなった可能性が示されました。
♦ 本研究の結果は、原始地球の形成過程(特に、微惑星の集積〜コアーマントル分化のプロセス)における軽元素の振る舞いについての理解が進むと期待されます。

発表雑誌
Iizuka-Oku R., H. Gotou, C. Shito, K. Fukuyama, Y. Mori, T. Hattori, A. S.Furukawa, K. Funakoshi and H. Kagi (2021),
Behavior of light elements in iron-silicate-water-sulfur system during early Earth’s evolution,
Scientific Reports, 11, 12632, doi: 10.1038/s41598-021-91801-3.

プレスリリースの詳細は理学部ニュースをご覧ください。

2021.2.19
低温高圧下で新しい氷の相(氷XIX)を発見

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発表した鍵研のメンバー

山根 崚(博士課程3年生), 小松 一生(准教授), 伊藤 颯(修士課程1年), 鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ 独自に開発した低温高圧下誘電率測定装置および中性子回折実験により、新しい氷の多形(氷XIX)を発見した。
♦ この氷XIXは、氷VIの水素秩序相だが、これまで知られてきた氷VIの水素秩序相(氷XV)とは異なる秩序相であり、一つの水素無秩序相に対応して複数の秩序相が存在することを初めて示した。
♦ 氷VIと二つの秩序相の温度−圧力相図を明らかにし、二つの異なる秩序化が圧力の違いにより実現していることを明らかにした。

発表雑誌
Yamane R., K. Komatsu, J. Gouchi, Y. Uwatoko, S. Machida, T. Hattori, H. Ito and H. Kagi (2021),
Experimental evidence for the existence of a second partially-ordered phase of ice VI,
Nature Communications, 12, 1129, doi: 10.1038/s41467-021-21351-9.

プレスリリースの詳細は理学部ニュースをご覧ください。

2020.7.2
二酸化ケイ素が地球表層の窒素を地球超深部へ運ぶ

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発表した鍵研のメンバー

鍵 裕之(教授), 福山 鴻(博士課程3年生), 柿澤 翔(特任研究員(当時))

発表のポイント

♦ 高温高圧実験と二次イオン質量分析法による局所分析によって、地球深部の鉱物中にとりこまれる窒素の溶解度を決定した。
♦ 堆積物や大陸地殻が沈み込んで地球深部で形成されるスティショバイトに高濃度で窒素が取り込まれることがわかった。
♦ 地球表層から沈み込んだ窒素はスティショバイトとともに下部マントルまで運ばれ、蓄積していく。地球大気は地球深部鉱物と共に進化してきた。

発表雑誌
Fukuyama K., H. Kagi, T. Inoue, S. Kakizawa, T. Shinmei, S. Hishita, N. Takahata and Y. Sano (2020),
High nitrogen solubility in stishovite (SiO2) under lower mantle conditions,
Scientific Reports, 10, 10897, doi: 10.1038/s41598-020-67621-2.

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2020.3.10
中性子回折実験から解き明かされた氷の謎 : 水素の移動様式の変化が高圧下でさまざまな異常を引き起こしていた

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発表した鍵研のメンバー

小松 一生(准教授), 鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ 低温高圧その場中性子回折実験により、氷の相転移速度が10 GPa付近で最も遅くなるという異常な現象を発見した。
♦ この異常な振る舞いは、加圧によって水分子の回転運動が遅くなると同時に隣の酸素原子への水素の移動が速くなるというモデルによって説明できることがわかった。
♦ 本研究で提唱した水素の移動様式の変化は、これまでさまざまな実験で報告されてきた10 GPa付近での氷VII相の異常の起源であると思われ、今後、水素結合を持つ他の物質でも同様に観察される可能性がある。

発表雑誌
Komatsu K., S. Klotz, S. Machida, A. S.Furukawa, T. Hattori and H. Kagi (2020),
Anomalous hydrogen dynamics of the ice VII-VIII transition revealed by high pressure neutron diffraction,
Proceedings of the National Academy of Sciences, 117, 6356-6361, doi: 10.1073/pnas.1920447117.

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2020.2.3
乱れのない氷をつくる

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発表した鍵研のメンバー

小松 一生(准教授), 山根 崚(博士課程大学院生), 山下 恵史朗(博士課程大学院生), 鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ 氷Icと同じ水分子フレームワークを持つ水素ハイドレート高圧相を低温下で脱圧することで、積層不整のない氷Icの合成に世界で初めて成功した。
♦ 得られた氷Icはこれまでにない高温安定性を持つことが明らかとなった。
♦ 今後、積層不整のない氷Icの物性に関する研究が飛躍的に進み、積層不整が氷の物性に与える影響についても解明されていくことが期待できる。

発表雑誌
Komatsu K., S. Machida, F. Noritake, T. Hattori, A. S. Furukawa, R. Yamane, K. Yamashita and H. Kagi (2020),
Ice Ic without stacking disorder by evacuating hydrogen from hydrogen hydrate,
Nature Communications, 11, 464, doi: 10.1038/s41467-020-14346-5.

プレスリリースの詳細は理学部ニュースをご覧ください。

2018.11.22
高圧下における水素結合の対称化の直接観察に成功 − 地球深部で含水鉱物の高圧相に起きる物性変化の原因を解明 −

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発表した鍵研のメンバー

小松 一生(准教授), 鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ 含水鉱物の高圧相であるδ-AlOOHについて、地球深部に相当する高圧環境下で水素結合に関連すると考えられる物性の変化が起きることが報告されていましたが、その原因については議論がありました。
♦中性子実験によりδ-AlOOHの水素位置の圧力変化を観測し、水素原子が二つの隣接する酸素原子間の中点に存在するようになる「水素結合の対称化」が高圧下で起きることを初めて実証しました。
♦ わずかな水素位置の変化が鉱物のマクロな物性の変化をもたらすことを示しており、今後、含水鉱物の物性に基づき地球深部の水素の存在量などを議論する場合は、水素結合の結合様式の圧力変化の影響を考慮する必要があると考えられます。

発表雑誌
Sano-Furukawa A., T. Hattori,K. Komatsu, H. Kagi, T. Nagai, J. J. Molaison, A. M. dos Santos, and C. A. Tulk (2018),
Direct observation of symmetrization of hydrogen bond in δ-AlOOH under mantle conditions using neutron diffraction,
Scientific Reports, 8, 15520, doi: 10.1038/s41598-018-33598-2.

プレスリリースの詳細はJAEAのプレスリリースをご覧ください。

2016.8.26
大量に塩を含む氷の特異な構造を解明

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発表した鍵研のメンバー

小松 一生(准教授), 鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ 高濃度の塩を含む氷の高圧相を合成し、中性子回折法および分子動力学法を駆使してその構造を解明した。
♦ 合成された高濃度の塩を含む氷は、氷VII相と同様の酸素配置をとるが、水分子の向きについては氷VII相と違ってほぼ等方的であり、水素結合ネットワークの多くが破壊されていることを見出した。
♦ このような等方的に配向した水分子や破壊された水素結合ネットワークは、他の氷の多形には見られない特異な状態であり、新奇な物性の発現が期待される。

発表雑誌
Klotz S., K. Komatsu, F. Pietrucci, H. Kagi, A. A. Ludl, S. Machida, T. Hattori, A. S. Furukawa and L.E. Bove (2016),
Ice VII from aqueous salt solutions: From a glass to a crystal with broken H-bonds
Scientific Reports, 6, 32040, doi: 10.1038/srep32040.

プレスリリースの詳細は理学部ニュースをご覧ください。

2016.7.4
高圧氷に新たな秩序状態を発見∼ 氷の五大未解決問題の一つを解決 ∼

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発表した鍵研のメンバー

小松 一生(准教授), 山根 崚(修士課程大学院生), 鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ 大強度陽子加速器施設(J-PARC)、物質・生命科学研究施設(MLF)にある超高圧中性子回折装置PLANETを用いて低温高圧下で存在する氷XV相の直接観察に成功した。
♦ その結果、氷XV相は異なる水素配置が混合した“部分秩序状態”にあることを初めて明らかにし、氷研究における五大未解決問題の一つを解決した。
♦ 発見した部分秩序状態は、氷XV相だけでなく他の形の氷でも発見される可能性があり、氷の多様性の理解に新たな視点を与えるものである。

発表雑誌
Komatsu K., F. Noritake, S. Machida, A. S. Furukawa, T. Hattori, R. Yamane and H. Kagi (2016),
Partially ordered state of ice XV
Scientific Reports, 6, 28920, doi: 10.1038/srep28920.

プレスリリースの詳細は理学部ニュースをご覧ください。

2015.8.11
室温・高圧条件でのアミノ酸のペプチド化 -氷衛星における生命誕生の可能性-

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発表した鍵研のメンバー

鍵 裕之(教授)

発表のポイント

♦ アミノ酸の一種であるアラニンの過飽和水溶液に室温で5 〜11 GPaの高圧力をかけたところ、圧力によって誘起されるアラニンの脱水縮合反応、即ちペプチド化が起こることを発見しました。
♦ 室温かつ水が共存する条件下では、アミノ酸のペプチド化はきわめて起こりにくいとされてきましたが、高圧条件下では、これまでの常識を覆す化学反応が起こりました。
♦ 本研究結果は、地球から遠く離れた氷衛星や氷惑星などで生体関連物質が容易に作られる可能性を示しました。

発表雑誌
Fujimoto C., A. Shinozaki, K. Mimura, T. Nishida, H. Gotou, K. Komatsu and H. Kagi (2015),
Pressure-induced oligomerization of alanine at 25 °C,
Chemical Communications, 51, 13358-13361, doi: 10.1039/c5cc03665h.

プレスリリースの詳細は理学部ニュースをご覧ください。

UTokyo Science Research Video

『新しい種類の氷(氷XIX)を発見』

『地球超深部と大気の共進化』

『中性子で地球・惑星深部を探る』

理学部ニュースの記事

新しい氷の姿 学部生に伝える研究最前線

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水は0℃以下で氷になる。しかし,これが常識として通用するのは,1気圧の世界においてのみである。圧力を上げると徐々に氷の融点は下がるが,0.21GPa (大気圧のおよそ2000倍)より圧力が高くなると逆に上昇に転じる。
今から100年以上も前,この事実を発見したG.タンマンは……
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高圧の世界でアミノ酸が手を結ぶ 学部生に伝える研究最前線

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物質に圧力をかけると原子間距離が縮まり,別の構造をもつ物質に変化する。高圧下で液体の水が氷(厳密に言えば氷の高圧相)に,グラファイトがダイヤモンドに変化するのは可逆的な物理変化である。一方,有機化合物(有機分子)に圧力をかけると,分子間の距離が縮まって分子どうしが手を結び,新たに結合が形成されることが知られている。これは圧力によって……
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地球・惑星深部における水素の物質科学 1+1から∞の理学

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水素は原子番号「1」でもっとも軽く,太陽系での存在度が「1」番高く,あるときは 陽イオンとして,またあるときは陰イオンとして ふるまう変幻自在な元素である。
氷には水分子間に働く水素結合ネットワークの多様性から18種類もの多形が存在する。水素は液体ロケット燃料,ニッケル水素電池,燃料電池にも利用され……
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いつもの風景から 理学エッセイ

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私たちの研究室は理学部化学館の中にある。今回のエッセイでは化学館の周りをぐるっと1周歩いて思い出すことを気の向くままに書いてみたい。
化学館は今年でちょうど築100年の化学東館,講義室がある化学本館,私の研究室がある化学西館からなる。大学病院側の東館正面玄関から時計回りに歩くとまず目につくのが……
続きは理学部ニュースをご覧ください。