研究内容

 火山ガスは、火山の地下にあるマグマから脱ガスしてきた揮発性成分や山体周辺の地下水などによって構成されています。火山ガスの放出量や化学組成の変化を知ることで、地下のマグマや熱水系の情報を得ることができます。地下でのマグマの上昇やガス溜まりの圧力の増減などに伴う火山ガスの放出量や化学組成の変化をとらえることは、火山噴火メカニズムを理解する上で重要な観測項目の一つに挙げられます。現在は以下のような観測によって得られたデータを使って火山の研究を進めています。

火山ガス化学組成の遠隔測定法の開発
 一般に火山ガスの化学組成を知るためには、火口や噴気孔から直接ガスを採取して実験室に持ち帰り、分析を行います。しかし、火口や噴気孔にはアプローチが不可能でガスサンプルが採取することが難しい場合が多々あります。また、噴火、噴煙活動が活発な場合には噴気孔へ行くことは危険なためできません。このような状況の火山ガスの化学組成を知るには遠隔測定が有効な手段となります。
 火山ガス化学組成の遠隔測定に赤外分光法を用いた手法の開発をおこなっています。噴気孔や火口から、数百メートルから数キロメートル離れた地点よりSO2,HCl、CO2、COS、CO、HF、SiF4などのガス成分を測定できるようになりました。ガスの化学組成の変化もとらえられるようになってきました。しかし、この手法にはまだ測定上の制限がいくつかあるのが現状です。多様な条件下で観測ができるように測定・解析手法の改良を進めています。

阿蘇中岳での観測の様子

火山ガス放出量の遠隔測定
    −ポータブル機器の開発及び測定法の確立−

火山からのガス放出量を求めるには、1970年代よりCOSPEC(Correlation Spectrometer)という機械が使用されてきました.この機械を使用することで火山からのSO2の放出量の測定ができます。最近になって、超小型のUV分光計を使用してCOSPEC同様のまたはそれ以上の測定が可能となってきました。小型の分光計を用いた測定システムは従来のCOSPECシステムに比べ、重さ、大きさともに1/10になります。これによって、持ち運びの自由度が増すので、今までCOSPECでは実現できなかった測定が可能となります。現在は国内の複数の機関と協力して、小型UV分光計を使用した、ポータブルなSO2放出量の測定装置の開発と測定方法の確立に取り組んでいます。

ポータブル装置でウォーキングトラバース中@雌阿寒岳


小型紫外分光計を用いた火山ガス放出量測定のページへ

地表からの二酸化炭素の放出に関する研究
火山からは山頂火口や噴気孔以外の場所からも火山性のガスが出ている場所があります。見た目にはガスなど出ていないように見えるのですが、ゆっくりと地表から染み出すように出ているのです。このようなタイプの火山ガスの放出を拡散放出などと呼んでいます。放出するガスの主成分は大気成分が多いのですが、マグマ性の二酸化炭素も含まれる場合があります。下の写真に示すように地表に風呂桶のような形状のチャンバーを被せ、チャンバー内部の二酸化炭素濃度の上昇率から、地表からの放出量を求めます。昭和新山、有珠山、三宅島、八甲田山などで二酸化炭素フラックスの分布や総量を調査しています。

二酸化炭素拡散放出量の測定@有珠山

その他: 作製中です