2019年7月12日

Date: 16:00-18:00, Friday, July 12, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Naoki Yamaguchi, Ryo Yamane

日 時:2019年7月12日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:山口尚希、山根崚

講演者:山口尚希(Naoki Yamaguchi)
タイトル:有機金属構造体CYCU-3の圧媒体による圧縮挙動の差異と単結晶合成法の検討
Title: Difference in compression behavior of CYCU-3 using various pressure media and synthesis of the single crystals
要旨:多孔質材料は構造中にナノメートルオーダーの細孔を持ち、その大きさにあった分子を構造中に取り込むことができる。現在ではこの特性を生かし、主に流体の吸着、分離、貯蔵などに利用されている。
近年、Metal Organic Framework (MOF) が新たな多孔質材料として盛んに研究されている。MOFは金属イオンと有機配位子から成る高分子であり、従来の多孔質材料に比べ、大きい比表面積や構造の設計性・柔軟性の点で既存のものよりも優れている。
しかしMOFの分野で盛んに研究されているのはガス吸着や触媒作用についてであり、圧力に対する応答に注目した研究はあまり多くない。
これらを踏まえ、アルミニウムと4,4-スチルベンジカルボン酸から成るMOFであるCYCU-3とメタノール/エタノール混合溶媒およびメタノールを圧力媒体とした高圧実験を行ったところ、メタノールの選択的取り込み、圧力増加に伴う単位胞体積の増加という非直感的な現象を見いだした。
本セミナーでは、圧媒体としてヘリウムを用いたときの単位胞の体積変化と、より詳しい構造解析に必要な単結晶を得るための合成手法について述べる。

講演者:山根崚(Ryo Yamane)
タイトル:氷VI相の新しい秩序相の探索と発見
要旨:水は室温で加圧していくと、1 GPaほどで固化し氷VI相に相転移する。”冷凍庫の氷”であるIh相と同じく水素原子位置について無秩序な氷の高圧相である。
高圧実験技術の飛躍的な進展により1 GPaなどわけなくだせるようになった現在、言ってみれば氷VI相は”冷凍庫の氷”と同じくらい身近な存在であろう。
今回のセミナーはこの氷VI相の低温秩序相に関するものである。現在知られている氷VI相の秩序相は、2008年にSalzmannらが中性子回折測定によって発見した氷XV相であるが、
2018年にGasserらは1-2 GPaのいくつかの圧力で低温秩序化させた試料の示差熱量測定の結果から1.5 GPa以上にもう一つ異なる秩序相(β-XV相)の存在を提案した。
しかし、Gasserらの測定は液体窒素温度で常圧回収した試料を用いたものであり、熱量測定の結果からβ-XV相の正体がガラス化した氷VI相という可能性も否定できず(Salzmann, 2019)、現在一大論争となっている。そこで、本研究では鍵研でこれまで培ってきた高圧実験技術を用いて誘電率、中性子回折測定を高圧下で行い確かに氷XV相とは異なる秩序相の存在を確認したのでその詳細を報告する。