沿革

【経緯】

地殻は地震の発生など地球の活動が最も顕著に現れる場で、人類の社会生活とも重要なかかわりを持っています。大地震は時には人命や財産の損失をもたらし、計り知れない社会的混乱を引き起こします。地震予知は社会要請となり、化学的研究の必要性は一層認識されるようになってきました。

我が国の地震予知計画は、測地学審議会の建議に基づき地球物理学的研究を中心として推進されてきました。しかし、昭和40年代後半から地球化学的研究の重要性が認識されるようになりました。 昭和50年7月25日の測地学審議会の建議「第3次地震予知計画の一部見直しについて」、および、昭和51年12月17日の「第3次地震予知計画の再度一部見直し」で、地下水に関する調査・研究の推進が提言されました。

東京大学理学部においては、昭和48年より地殻から放出されるラドンやヘリウムなどに関する研究が進められてきました。これらの建議を受けて、本学部の地球化学的な地震予知の研究・観測をさらに発展させるため、昭和53年(1978年)4月、「地殻化学実験施設」が設置されました。

昭和57年4月には地殻の異常な活動に対応する総合移動班が置かれ、機動的観測の体制が整備されました。

その後、地震活動と共通の地学的要因によって生ずる火山活動に対しても化学的研究の必要性が認識され、測地学審議会の建議「第3次火山噴火予知計画の推進について」(昭和58年5月31日)に盛り込まれました。地殻内に生じる諸現象の化学的解明を目的とする本実験施設においては、これを受けて昭和60年4月に火山噴火予知計画を推進するため、所要の研究体制の確立が図られました。

【現況】

本実験施設は、地球内部・地殻・地球表層におきる諸現象の化学的解明に必要な諸実験及び研究従事者の教育を行うことを目的としています。本実験施設は、施設長(併)・教授2・准教授2。助教1で組織されています。地殻化学の研究を行うには、化学はもとより地球物理学および地質学との密接な交流が必要であるため、本実験施設の運営は、発足当初より学部内関連教室の教員の協力を得て行われています。本実験施設の教員は、本学理学系大学院における教育を担当し、人材養成の任務をも果たしています。研究上の必要性から、本実験施設の教員は国外の研究者とも密接な連絡をとり、各種との国際交流を活発に行っています。

【外部評価】

【将来計画】

外部評価報告(2007年1月)を受けて、地殻化学実験施設は次期計画へ向けた本施設の活動指針を定めました。

  • ここ数年、本施設での主要な研究アクティビティとなりつつある地球物質科学分野の研究をより一層強化する。すなわち、研究手法の基盤的開発を進めながら、超高感度・高精度質量分析、極限状態での分光測定、大型加速器による地球内部物質や惑星関連物質の研究を推進する。
  • 観測研究については、予知コミュニティと協力を保ちながら、分光学的手法を基軸とした新規観測手法の開発や、地震火山に関連する素過程の研究を重点的に進める。そのために必要な観測拠点は存続させ、その他の観測点は随時、廃止または移管を進める。
  • 大学院理学系研究科化学専攻及び地球惑星専攻との協力関係・独自性を十分に活かし、国内外の研究者が共同研究に頻繁に訪れている現状をより一層サポートできる体制を作るため、学内外の他研究機関とのネットワークを強化する。国際研究拠点との協定の締結を進める。
  • 上記の将来計画を実現しながら、将来的に施設名称の変更を行うことも視野に入れる。