2019年10月18日

Date: 16:00-18:00, Friday, October 18, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Hayate Ito, Haruka Nakano

日 時:2019年10月18日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:伊藤颯,中野遥

講演者1:伊藤颯(Hayate Ito)
タイトル:ピストンシリンダーを用いた高圧下比熱測定の試み
Title: Measurement of heat capacity in piston cylinder
要旨:氷は様々な多形を示すことが知られていて、その多形の問題に対し様々な面からのアプローチが試みられており、物性測定も盛んに行われてきた。
従来の氷の多形に対する物性測定は急冷して常圧下で回収したサンプルを用いていることがほとんどで圧力の効果を議論できないでいる。
また高圧化で誘電率を測定した例もあるが、誘電率から得られるのは分子のダイナミクスの情報であり、静的な情報は得られない。
様々な物性がある中で、比熱は熱力学的にもっとも重要なパラメーターであり、また相転移熱の測定から構造の持つエネルギーを議論したり、エントロピーを通して氷の秩序相の共存可能性などを議論できるなど他の物性測定では得られない情報を持っている。
本研究は交流法を用いてピストンシリンダー中で、高圧下比熱測定を行う手法の開発を行なっているため現状の進捗と問題点、今後の課題を報告する。

講演者2:中野遥(Haruka Nakano)
タイトル:LA-ICP-MS法による金属添加ポリマー標準試料の定量評価
Title: Quantitative evaluation of metal spiked polymer standards by LA-ICP-MS
要旨:固体試料の元素分析を行う方法としてレーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS)がある。LA-ICP-MSを用いた分析では固体試料の溶液化が不要であり、またレーザー光の制御により局所分析が可能であるため、迅速かつ高感度な元素分析法として注目されている(Becker et al., 2007)。近年ではメタロミクスという生体内に存在する金属元素の機能と役割を体系的に解明することを目標とした研究が盛んに行われており、生体試料中の金属元素分析を行う方法としてLA-ICP-MSは用いられている(Austin et al., 2010)。
LA-ICP-MSによる定量分析では、アブレーションされた元素を組成通りに検出する必要があるが、レーザー光による試料からの元素放出効率などが分析元素や試料の組成に大きく依存することが知られている(Leach et al., 1999)。より信頼性の高い分析結果を得るためには、未知試料と同じ主成分組成の標準試料(濃度校正用試料)が必要となる(Becker et al., 2005)。LA-ICP-MS分析における標準試料にはアメリカ国立標準技術研究所が作製した標準ガラス試料が一般的に用いられているが、主成分がガラスであるため生体試料の定量分析を目的とした際には分析結果の信頼性評価が困難である。
Austin et al. (2010) は金属元素を添加したポリマーを標準試料として作製し、筋組織中の銅、亜鉛の定量分析を報告している。ポリマー標準試料は作製が容易であることにくわえ、アブレーションの閾値が低いためレーザー照射領域の全試料をアブレーションすることが可能である。しかしながら、より多くの元素を定量分析するには、適切なポリマーの選定や標準試料作製法など、より詳細な条件の決定が求められる。そこで本研究では、各種金属元素が添加されたポリマー標準試料を作製し、生体試料中金属元素の定量分析を目指す。本発表では、作製したポリマー標準試料中の金属元素の均一性評価と今後の展望を述べる。