2019年11月29日

Date: 16:00-18:00, Friday, November 29, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Haruka Kikuchi, Naoki Yamaguchi

日 時:2019年11月29日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:菊地悠、山口尚希

講演者1:菊地悠(Haruka Kikuchi)
タイトル:キャリアガスにArを用いたレーザーアブレーションICP質量分析法
Title: Laser ablation ICP mass spectrometry using Ar as carrier gas
レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS法)は、固体試料の元素分析・同位体分析を高感度かつ迅速にできる分析手法である。イオン源として大気圧高温プラズマを利用しているため大気圧下での試料導入・イオン化が可能であり、レーザーアブレーションによってエアロゾル化した試料を導入可能である。アブレーションによって生成した試料エアロゾルのICP-MSへの輸送には、一般にHeガスが用いられている。Heは熱伝導性が高くレーザー照射により生じる高温領域が広くなるため、エアロゾルの凝縮・付着成長が抑制され、生成する試料エアロゾルの粒径が小さくなることが知られている。粒径の小さなエアロゾルは、クレーター周辺や輸送管内に付着・損失することなくプラズマまで運ばれるため、分析感度および信号の安定性が向上する。このような背景により、LA-ICP-MSではHeがキャリアガスとして用いられている。一方で、世界的なHeの供給不足や需要の増加によりHeを確保することが困難になっており、Heを用いない分析システムへの需要が高まっている。そこで本研究では、キャリアガスとしてArを利用することによりHeとの代替可能性に関して定量的に検証した。本発表ではキャリアガスにArとHeを用いた時の分析条件の検討と比較結果について言及する。

講演者2:山口尚希(Naoki Yamaguchi)
タイトル:有機金属構造体CYCU-3の各種アルコールによる圧縮挙動の差異
Title:Difference in compression behavior of CYCU-3 using various alcohol pressure media
多孔質材料は構造中にナノメートルオーダーの細孔を持ち、その大きさにあった分子を構造中に取り込むことができる。現在ではこの特性を生かし、主に流体の吸着、分離、貯蔵などに利用されている。
近年、Metal Organic Framework (MOF) が新たな多孔質材料として盛んに研究されている。MOFは金属イオンと有機配位子から成る高分子であり、従来の多孔質材料に比べ、大きい比表面積や構造の設計性・柔軟性の点で既存のものよりも優れている。
しかしMOFの分野で盛んに研究されているのはガス吸着や触媒作用についてであり、圧力に対する応答に注目した研究はあまり多くない。
これまでの実験でアルミニウムと4,4-スチルベンジカルボン酸から成るMOFであるCYCU-3に圧媒体としてメタノール、ヘリウムを用いて高圧下の単位胞体積を測定したところ、それぞれに対し異なる圧縮挙動を示すことが分かっている。そこで今回はメタノールとより物理的、化学的に似た性質を持つエタノール、プロパノールを圧媒体として用いた場合のCYCU-3の単位胞体積の差異について述べる。