2020年10月16日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, October 16, 2020

日時: 2020年10月16日(金)16:00 – 18:00

講演者:大野 鷹士

Speaker: Takato Ono

タイトル:火山性流体の野外自動サンプリング装置の開発: 火山性水試料への適用

Title: Development of a field auto-sampling tool for volcanic fluids: Applications to volcanic waters

活火山から放出される火山ガスや火口湖水、温泉水などの火山性流体にはマグマから脱ガスした揮発性成分が含まれており、火山活動の状態を把握する上でその化学組成を観測・分析することは重要である。マグマ温度に近い高温火山ガスの化学組成は地下のマグマの状態を直接的に理解する上で有効なツールとなる一方で、水蒸気噴火を起こすような熱水系卓越火山においてはマグマ性ガスのスクラビングに伴い、ガス中の水溶性成分が地下浅所や地表付近で液相(天水起源の地下水や表層水)側に移動する場合が多く、火山活動の活発化が火山ガスではなく火口湖水や温泉水の化学組成の異常として捉えられる場合がある。
 火山ガス組成に関してはリモートかつ連続的な観測が近年行われるようになっているが、微量成分を含めた詳細かつ正確な化学組成を得るためには従来から行われている噴気孔からの直接サンプリングが未だに必要不可欠である。また、火山性水試料に関してはpHや電気伝導度などの特定の観測項目を除いて連続観測は行われておらず、サンプリングベースでの研究が進んでいる。現状の火山性流体のサンプリング頻度は地震・測地観測に基づく地球物理学的データとの比較や異常な変化を検出・分離する上で乏しく、採取されたサンプルは通常フィールドワークに適した好天時のものに限られるため、季節変動や日変動に関する情報も限定的である。
 そこで本研究では、サンプリング頻度の向上を目指し、火口域周辺から放出される火山性流体を採取するための描写ロボットをベースとした野外自動サンプリング装置(G-code-Operated Field Auto-sampling Tool: GOFAT)を開発した。室内でのテスト稼働の後、開発したサンプリング装置を活発な火山活動を続ける箱根山と十勝岳から湧出する火山性温泉水に適用した。GOFATの適用により、従来の数百倍から数千倍に及ぶサンプリング頻度を達成することができた。さらに、高頻度のサンプリングによって、従来のサンプリング頻度では捉えられなかった数時間から1日程度の化学組成の変化を捉えることができた。
 本発表では、これまでのGOFATの稼働状況や改良作業、得られた化学組成の時系列データに対して多変量解析の一種である因子分析を適用した結果、化学組成の短期的変動を引き起こした要因についての考察等についてお話しする予定である。