2024年1月5日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, January, 5, 2024

発表者:大西 恵理
Speaker: Eri Onishi

タイトル:液中レーザーアブレーション法による白金同位体比測定の検証
Title: Examination of laser ablation in liquid technique for measurement of isotopic ratio of platinum

宇宙年代の正確な算出は宇宙物理学の分野においても有用である。宇宙年代の測定手法には放射性核種の壊変を利用したものが存在するがこれらの年代測定法で利用される核種はr-processと呼ばれる合成過程によって合成される。r-processは爆発的な過程であり核種の合成量はパラメータによって大きく変動するため物質的証拠であるプレソーラー粒子の分析によってパラメータ(例: 中性子星の質量: Wanajo et al., 2013, 中性子過剰核の質量、中性子過剰核の半減期:Wu et al. 2016 )に制約を与えることが必要になる。

 プレソーラー粒子は同位体組成が太陽系と大きく異なることから発見されるが、本研究ではr-processによる合成量が多く、白金194、白金195、白金196が同程度存在しており白金194、白金195は同重体干渉を受けず白金196の同重体である水銀196は存在割合が0.15 %(Berglund et.al., 2009)と低いため同重体干渉の影響が小さくなるため正確な同位体比測定を行いやすい白金に着目する。本研究の目標は多重検出器型ICP-MS(MC-ICP-MS)を用いて白金同位体比を測定しプレソーラー粒子を発見することである。プレソーラー粒子は隕石中に含まれており隕石からプレソーラー粒子を取り出す方法として酸分解法による耐酸性粒子の単離、抽出(Amari et al., 1994)が存在する。この方法では酸に溶解する粒子の抽出は不可能であるため白金が濃集している金属粒子の抽出が困難であると考えられる。そのため本研究では隕石からナノ粒子を抽出する方法として液中レーザーアブレーション法(LAL法)(Okabayashi et al., 2011)に着目した。

 LAL法による同位体分別について鉄、鉛の同位体比はLAL法で用いるレーザーのフルエンスによって大きく変化しない(Okabayashi et al., 2011)ことが明らかになっているが白金同位体比の変動についてはまだ調べられていない。本発表ではレーザーのフルエンスと白金同位体比の関係について発表する。

発表者:川嶋 大陸
Speaker: Tairiku Kawashima

タイトル:完新世試料の年代測定へ向けたレーザーアブレーションICP質量分析法の最適化
Title: Optimization of Laser Ablation ICP Mass Spectrometry for Dating of Holocene Samples

地球年代学において現在主流となっている年代測定法は、ジルコンを用いたU–Pb年代測定法である。この手法によっておよそ40億年前から40万年前の試料に関しては年代測定が行われてきたが、40万年より若い試料においては230Thに由来する放射非平衡が無視できないため、Pb/Uのみでは年代測定が正確に行えず、40万年より若い年代領域は地球年代学における空白領域となっている。

さらに1万年より若い試料を用いて年代測定を行うことを視野にいれると、230Thのほかにも231Paや226Raなどの測定が必要になってくる。しかしこれらの同位体はその存在度が低いことから、測定が困難になっている。

そこで本研究においては、レーザーアブレーションICP質量分析法における実験条件を網羅的に検討し、最適な条件を決定することで装置の高感度化を図ることにした。本発表ではその途中経過についての報告を行う。