2016年11月18日

【Speaker 1】

Date: 4.00pm-5.30pm, Friday, 18 November 2016
Place: Room 1302, Main Chemistry Build.
日 時:2016年11月18日(金)16:00~17:30
場 所:化学本館3階講義室

Speaker1: Ko Fukuyama
Title: Incorporation of nitrogen into the lower mantle minerals under high pressure and high temperature
講演者1:福山 鴻

窒素は地球大気組成の約八割と大半を占めており、生命に欠かせない元素であ る。しかし、地球表層と分化マントルを合わせた窒素量は、コンドライト モデ ルから予想される地球全体の窒素総量に比べて極端に少ない(e.g. Marty et al., 2012)ことが知られている。原因として、初期地球における分化過程にお いて、始原的なマントルである固相中に窒素が保持されたことが可能性のひとつ と して考えられている (Li and Keppler, 2013)。しかし、未だにはっきり分 かっているとは言えない状態である。
そこで本研究では、高温高圧実験によって下部マントル鉱物中の窒素の溶解度や 取り込み様式を明らかにすることを目標としている。実験には、マルチ アンビ ル高圧発生装置(MA)とレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル(LH-DAC)を 用いる。LH-DACでは、試料としてMAで合成した bridgmaniteを使用する。 Bridgmaniteは地球全体で最も多く存在する鉱物であり、最近ではSi4+ ⇄ Al3+ + H+という置換関係から、Alとともに水を取り込むことが考えられている(Inoue et al. in prep)。窒素は水との存在下でより多く鉱物中に取り込まれることが 報告されている(e.g. Roskosz et al., 2013)他、Si3N4-AlN-Al2O3固溶体が報 告されている(Oyama, 1972)ため、本研究ではHとAl存在下での鉱物中への窒素 固溶量の増加を期待している。
本セミナーでは、愛媛大学GRCでのbridgmaniteの合成と今後の実験条件について 紹介する。

【Speaker 2】

Speaker2: Shuya Takahashi
Title: Pressure-induced esterification of acetic acid with methanol
講演者2:高橋 修也
タイトル:酢酸とメタノールの圧力誘起エステル化反応

有機物に圧力を加えると、分子間距離が縮まり常圧では起こらないような反応 が進行することがあるため、これまで様々な有機反応に関する高圧実験 が行わ れてきた。しかし、エステル化反応を超高圧条件下で進行させる試みはこれまで 行われてこなかった。エステル結合は生物を形作る上で不可欠で あるリン脂質 や油脂に含まれているため、カルボン酸とアルコールの脱水縮合によるエステル 化反応の条件を探ることは、生命発生へと至る分子進化の 観点からも重要である。
本研究では、比較的単純な構造を持ち宇宙にも多く存在する酢酸とメタノール について、ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧実験を室温で行っ た。まず は純粋な酢酸とメタノール、酢酸メチルについてそれぞれ、顕微IR、X線回折、 顕微ラマンを用いて、高圧下及び回収後に測定を行った。次に、酢酸とメタノールの混合溶液につ いても同様の実験を行った。得られた結果を純粋な試薬のものと比較し たとこ ろ、2.8GPaで圧力誘起エステル化反応が進行したことが強く示唆された。本セミ ナーでは、これまで行った実験の結果を発表し、同時に発 生している再現性の 問題についても報告する。