2020年9月25日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, September 25, 2020

日時: 2020年9月25日(金)16:00 – 18:00

講演者:鍵 裕之Speaker: Hiroyuki Kagi

タイトル:高圧下での有機分子の縮合反応_今後の展開

Title: Pressure-induced condensation reactions of organic molecules: future perspective

有機分子に圧力を加えていくと分子間距離が縮まり、気体は液化、液体は固化し、固体(結晶)はより安定な構造をもつ高圧相に相転移していく。このような変化は一般的には可逆的な物理変化である。物質にも依存するが、さらに高圧下では分子間の相互作用により圧力誘起の化学反応が進行し、不可逆的な変化が起こる。アセチレン、ベンゼン、ピリジン、シラノールなどで圧力誘起縮合反応、重合反応が知られている。また、メタノールと酢酸、メタノールとリン酸とのエステル化反応は数GPaオーダーの高圧下で進行する。これらの圧力誘起反応は、液体もしくは非晶質状態で100%近い高効率で進行する。
一方、水と共存させたアミノ酸(L-アラニン)は室温高圧下で脱水縮合反応が起こり、およそ10 GPaの加圧で最長で12量体までのペプチドの生成が確認され、氷天体内部での化学進化の可能性を提案しうる現象と考えている。しかし、重合の効率は2量体の生成率ですら高々0.1%程度で化学者目線では反応はほとんど進行していない。実験を行った高圧条件においてアミノ酸は安定な結晶構造をとり、これまで報告されてきた圧力誘起重合反応は結晶の欠陥や粒界などで進行したと考えられる。
ところで自然界でアミノ酸が結晶として存在する環境を自然界で想像できるだろうか?隕石にはアミノ酸が100 ppm程度含まれることがあるが、アミノ酸どうしが配列した結晶として存在するわけでなく、粘土鉱物などに吸着されていると考えられる。このような系ではアミノ酸どうしは結晶化せず、圧力下での反応が起こりやすい可能性がある。最近になって取り組み始めた実験も紹介しながら、今後の展望を議論する。


講演者:  森 俊哉

Speaker: Toshiya Mori

タイトル: 人工衛星による火山からの二酸化硫黄放出量測定の紹介

火山からの二酸化硫黄放出は、活動に関わるマグマ量の推定など火山活動のモニタリングに不可欠なほか、火山からの二酸化炭素バジェット推定の基礎をなす情報でもあり、火山観測において重要な観測項目のひとつとなっている。二酸化硫黄放出測定は、1970年代より地上からの紫外分光観測と人工衛星からの観測で行われてきた。人工衛星での観測は、観測開始当初は大規模な噴火に伴う二酸化硫黄放出しか観測することができなかったが、その後の観測機器や技術の進歩により、より小規模な噴煙でも観測が可能となってきた。特に。2017年10月にESAによって打ち上げられた人工衛星に搭載された大気モニタリング用の装置TROPOMIでは、画素サイズが7×3.5㎞^2にまでの高解像度となり、噴火噴煙だけでなく、定常的な二酸化硫黄放出も測定可能である。セミナーでは、人工衛星による二酸化硫黄放出測定の状況について紹介する。