2018年11月16日

Date: 16:00-18:00, Friday, November 16, 2018
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.

日 時:2018年11月16日(金)16:00~18:00
場 所: 化学本館3階講義室
講演者:中山和也(Kazuya Nakayama)、山根崚 (Ryo Yamane)

講演者:中山和也(Kazuya Nakayama)
タイトル:高圧下で存在する新規NaCl水和物の結晶構造と氷高圧相の関係

氷の水素結合ネットワーク構造と、塩のイオンは相容れず、塩水が凍ると塩分はほぼ粒界に濃集するというのが、かつての常識だった。しかし高圧氷VII相への塩の固溶の発見は、それを覆した(Frank et al., 2006, Klotz et al., 2009)。
一方本研究では、高圧下で見出された、非常に大きな水和数を持つ新規NaCl水和物について、中性子回折実験によりその結晶構造を明らかにした結果、この水和物は高圧氷VI相の部分構造を持つことが分かった。このことは、先の高圧氷への塩の固溶とは対称的に、塩水和物中にも氷の構造が存在しうることを示している。
発表では、他のアルカリ金属-Cl系水和物の結晶構造と高圧氷の結晶構造との関係についても議論したい。

講演者:山根崚 (Ryo Yamane)
タイトル:低温、高圧、高電場の多重環境下での中性子回折実験に向けた技術開発
Title:Development of a high-electric-field cell for neutron diffraction experiments under low temperature, high pressure and high electric field

温度、圧力、磁場、電場は物質の状態を決める重要な外部パラメータである。
温度と圧力は原子、分子の振動状態や原子間距離を変更する基本的なパラメータであり、
これらに磁場や電場といった物質の秩序変数を制御する外場を加えた”多重極限環境下”では、
自然界では存在しない環境での新奇な物性や相転移の誘起が期待される。
低温、高圧に高電場を組み合わせた(低温、高圧、高電場)の多重極限環境下では、
水分子をはじめとする極性分子を含む物質、強誘電体、および静磁場と静電場の結合を許すマルチフェロイック物質などの多彩な研究対象の一方で、
(低温、高圧、高磁場)の多重極限環境に比べ発展の余地を多く残す領域である。
本研究では、想定される(低温、高圧、高電場)の対象物質の中で、構造中の水素原子が誘電性を担うような物質が多いこと、
またマルチフェロイック物質の電場応答には磁気構造と密接に絡んだものも多くあることから(低温、高圧、高電場)における中性子回折実験に着目した。
これまで、高電場条件下で中性子回折実験を行った研究はなく、
実験手法および実験装置の確立は(低温、高圧、高電場)の多重極限環境下での研究のマイルストーンとなることが期待される。
当日は、一昨年、昨年とオーストラリアの中性子実験施設ANSTOで進めてきた、高圧、高電場条件下での中性子回折実験に向けた装置開発と
実際に氷VII相に対して行った高圧、高電場条件下での中性子回折実験の結果を報告する。