2019年7月26日

Date: 16:00-18:00, Friday, July 26, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Shotaro Oda, Sota Niki

日 時:2019年7月26日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:織田翔太郎,仁木創太

講演者1:織田翔太郎(Shotaro Oda)
タイトル:L-アラニンの圧力誘起重合反応における出発試料の結晶子サイズと多量体生成量との関係
Title:Relationship between crystallite size of starting sample and yields of multiplier in pressure-induced oligomerization of L-Alanine
要旨:アミノ酸の重合反応は、化学進化の重要なステップである。氷天体における化学進化の可能性に着目する我々のグループは、室温高圧条件下でのL-アラニンの脱水縮合反応を見出した。先行研究より、この反応はL-アラニンの結晶構造内ではなく、格子欠陥や結晶粒界などで進行したと推察している。そこで本研究は、圧力誘起重合反応の出発試料として結晶性の低いL-アラニンを用いることで、多量体生成量が増加するか調べることを目的としている。結晶性の低いL-アラニンを得るため、粉砕実験および凍結乾燥実験を行った。本セミナーでは、これらの実験の手法と結果、および今後の計画について述べる。

講演者2:仁木創太(Sota Niki)
Title: U–Pb dating of grossular-andradite series garnet by LA-ICP-MS
要旨:ウラン–鉛(U–Pb)年代測定法は、ウランの壊変定数が精確に決定されている点(Jaffey et al., 1971)とコンコーディア図を用いて閉鎖系の議論ができる点(Wetheril, 1956; Tera and Wasserburg, 1972)において、他の放射年代測定法より優れている。U–Pb年代測定法はジルコン、アパタイト、モナザイト、バデレイアイトといった高いウラン濃度(数十ppm以上)を持つ鉱物について適用され(e.g. Willigers et al., 2002; Cox et al., 2003; Horn et al., 2000)、地質時代のほぼ全範囲に対する精確な年代測定が行われてきた(Condon and Schmitz, 2013)。しかしながら、それらの鉱物は超苦鉄質岩中からほとんど産出しないため(Batumike et al., 2008)、超苦鉄質岩体について年代の制約を与えるのは困難である。
本研究ではグロッシュラー-アンドラダイト系列柘榴石(化学組成 Ca3Al2(SiO4)3 – Ca3Fe3+2(SiO4)3)をU–Pb年代測定の対象とする。グロッシュラー-アンドラダイト系列柘榴石は超苦鉄質マグマが結晶化していく際の最終段階で晶出する(Barrie, 1990)ほか、熱水活動に伴う交代作用や蛇紋岩化作用を受けた超苦鉄質岩中にも産出する(Austrheim and Prestvik, 2008)。グロッシュラー-アンドラダイト系列柘榴石のウラン濃度は数ppm程度と他のU–Pb年代測定で用いられる鉱物と比べて少ない一方、初生的な鉛の取り込みが十分少ないのでU–Pb年代測定に適しており(Barrie et al., 1990)、近年のLA-ICP-MSの高感度化に伴いU–Pb年代測定の報告がなされ始めた(Seman et al., 2017; Deng et al., 2017)。本研究ではSeman et al. (2017)において年代値の報告があるWillsboro、Mali、Lake Jacoという三種類のグロッシュラー-アンドラダイト系列柘榴石についてLA-ICP-MSを用いてU–Pb年代測定を行い、先行研究と整合的な年代値を得た。今後、この手法を用いて東赤石超苦鉄質岩体中のロジン岩に産するグロッシュラーのU–Pb年代測定を行い、放射年代の観点から東赤石超苦鉄質岩体の上昇過程における交代作用を明らかにする。