2019年10月25日

Date: 16:00-18:00, Friday, October 25, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Shiho Marugata, Yoshihiko Yamada

日 時:2019年10月25日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:丸形詩歩,山田慶彦

講演者1:丸形詩歩(Shiho Marugata)
タイトル:バリウムイオンを取り込んだカルサイト中での炭酸イオンのふるまい
Title: Behavior of CO32- in Ba-doped calcite
要旨:天然に産出する炭酸カルシウムに含まれる不純物イオンについて、微量元素の分配や古環境の復元など地球科学の様々な分野で研究が行われている。
二価の金属イオンの炭酸塩は一般的にカルサイト構造とアラゴナイト構造をとるものに分けられ、カルシウムイオンに比べてイオン半径が大きい二価の金属イオンはカルサイトの構造中に取り込まれにくい。しかし、非晶質相であるACCを経由することにより、不適合元素であるストロンチウムイオン(Matsunuma et al.,2014)やバリウムイオン(Saito master thesis,2019)を格子中に取り込んだカルサイトが合成されることが報告されている。
カルサイトの構造中に取り込まれるバリウムイオンの量が増加すると、XRDパターンにおいて113反射の消失が起こる。これは高温でのカルサイト中の炭酸イオンで見られるものであり、炭酸イオンは1260K以上で回転無秩序化転移することが知られている。(Ishizawa et al.,2013) 本発表では、バリウムイオンをドープすることによる室温での炭酸イオンの無秩序化転移について議論し、追加で行った実験結果についても報告した上で今後の展望を述べる。

講演者2:山田慶彦(Yoshihiko Yamada)
タイトル:レーザーアブレーションICP質量分析計による3次元元素イメージング分析
Title: 3D elemental imaging analysis using laser ablation-ICP mass spectrometry
要旨:脳などの生体組織内における元素のイメージング分析は、元素に関係する代謝機構を解明することに役立っている。また、この分析法は薬物動態に関する情報を提供する点や、アルツハイマーなどの脳疾患と微量元素との関係を解明する手助けになる点で注目されている(Maria et all., 2019)。 元素イメージング分析を行う方法として、レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS)がある。生体組織内元素イメージング分析では、厚さ数μmにスライスした切片に対してレーザーを走査することで時系列信号強度データを取得する。このラインプロファイル分析を試料全面に行い、2次元元素分布情報を取得する。
現在までに様々な生体試料に関する元素イメージング分析が行われている(Becker et all., 2009)。しかしながら,多くが2次元に関する報告であり3次元の元素イメージングの報告は少ない。3次元の元素イメージング画像は、CT(Compurted Tomography:コンピューター断層撮影)やMRI(Magnetic Resonace Imaging:磁気共鳴画像診断装置)から得られた神経や血管の分布画像と組み合わせることで、組織と元素分布の関係性を示す情報の取得が期待できるため、3次元元素イメージング分析の要請は高まっている。そこで本研究では、マウスの脳をイメージングすることにより、脳内の3次元元素分布画像を取得する事を目標としている。LA-ICP-MSによる3次元元素イメージング分析では2次元の場合と異なり、厚さ数μmにスライスされた数百枚のマウスの脳の切片それぞれに対して2次元イメージングを行い、さらにそれで得られた2次元画像を線形近似により3次元化する必要がある。本発表では、レーザーの走査速度が異なる場合に得られる2次元の元素イメージング画像の質について評価した結果と今後の展望について述べる。