2021年6月11日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, June 11, 2021 

日時: 2021年6月11日(金)

講演者:鍵 裕之

Speaker:Hiroyuki Kagi

タイトル:地球深部化学の前提に立ち返りながら新たな研究のシーズを探る

Title: Revisit to the premise of deep Earth chemistry and directions to new research trends

私たちの研究グループでは、マントルや核を構成する物質中での揮発性物質や軽元素のふるまいを実験的な手法で調べている。このような研究を進める上では下敷きとなる先達による研究成果はきわめて重要で、いわば巨人の肩に立つことによって研究が進んでいる。たとえばマントルを構成する物質の岩石学モデルであるパイロライトモデルは、1960年代にリングウッドによって提唱された。最先端の研究が進む今でも下部マントルの化学組成はパイロライト的であるとされている(たとえばIrifune et al., 2010)。もしも下部マントルがパイロライト的であるとすれば、CIコンドライトと呼ばれる未分化な隕石が地球の出発材料であった場合は地球の集積過程でSiが失われたか、核にSiが取り込まれたたことが示唆される。核へのSiの取り込みの可能性はSi同位体測定によっても示唆されているものの、もともと酸素原子と強固な共有結合をしているケイ素原子が酸素原子との結合を断ち切って鉄に取り込まれていくのだろうか?
本セミナーでは巨人の肩となる古典的ないくつかの論文を振り返りつつ、今後取り組むべき研究課題を提案したい。

発表者:八木 健彦

Speaker: Takehiko Yagi

タイトル:ダイヤモンドアンビル装置―さまざまな研究への応用

Title: Diamond anvil apparatus – Applications to various research

ダイヤモンドアンビル装置は、ダイヤモンドの小さな平面を2つ対向させその間に挟んだ試料を圧縮して試料に高い圧力を加え、さまざまな研究を行う超高圧発生装置である。1950年代末に高圧下の光スペクトルを観測する装置として生み出されたが、その後数多くの研究者によってさまざまな改良や技術開発が行われ、今や研究分野では最も広く利用されている高圧装置である。鍵研でもそれを使って高圧下でのX線やラマンの測定が行われているが、この装置は研究者のアイディアや改良によって実にさまざまな研究を展開できる可能性を秘めた装置でもある。本セミナーでは、今までのさまざまな使われ方と共に、近年急激に発達している極微小試料から多様な情報を引き出す実験技術の紹介をして、この先の新たな使い方の可能性を示唆する情報を提供したい。