2024年1月26日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, January, 26, 2024

発表者:角森 史昭
Speaker: Fumiaki Tsunomori

タイトル:半導体光センサを使ったラドン計の開発
Title: Development of a radon counter using a semiconductor photo sensor

 このセミナーでは、半導体光センサを使用したラドンカウンタの開発の現状について報告する。ラドンは、放射性の希ガスとして、地震の先行現象を検出するだけでなく、隠れた断層の探索や地層の透水係数の見積もりに利用されている。また、地表近くの大気塊の移動を評価したり、風上に位置する地域での化石燃料の使用を監視するためにも使用されている。このように、ラドンは様々な現象のトレーサとして幅広く活用されている。

 現在進行中の研究では、桜島周辺で観測された地下水中のラドン濃度の変動を調査している。近い将来、桜島周辺に10台以上のラドンカウンタを展開することで、桜島の火山活動と地下水中のラドン濃度の関係を明らかにしていきたい。しかし、市販のラドンカウンタが1台150万円以上もするため、計画の進行が妨げられている。この課題に対処するため、我々は自作のラドンカウンタの開発に取り組んでいる。

 ラドンの検出には半導体フォトセンサを検出器として採用し、その制御と測定を行うための電子回路を設計した。さらに、将来的な屋外展開と自動運転を想定して回路を設計した。この設計に基づいて回路を製作し、ファンクションジェネレータによる動作確認と、ラドンとトロンを放出する「ラジウムセラミックボール」を使用した測定を行った。これらの結果を基に、計測回路の評価を行い、アルファ線エネルギースペクトルの時間変化を処理し、娘核種の崩壊量の時間変化を取得できることを確認した。

 ラドンの崩壊定数の計算結果や214Po/218Po比の2時間後の値の比較から、ガスチャンバの気密が不十分な可能性があることが分かった。ガスチャンバの気密対策に加えて、ポンプの動作やCO2センサの追加、バッテリ駆動のテストなどを進めつつ、携帯可能なボックスに格納して野外で使用できるラドンカウンタとして完成させる予定である。

発表者:森 俊哉
Speaker: Toshiya Mori

タイトル:二酸化硫黄放出率観測から推定される口永良部島でのマグマ注入過程
Title: Magma input process estimated from SO2 flux monitoring at Kuchinoerabujima volcano, Japan.

口永良部島は屋久島の北西約12㎞に位置する離島火山である。2014年8月の小噴火以降活発な噴煙活動を続けてきた。2014年8月以降の二酸化硫黄放出率の増加を受け、2014年11月末より、自動化した上空二酸化硫黄量測定システムを屋久島と口永良部島を結ぶフェリーに搭載してもらい、二酸化硫黄放出率測定を9年間以上にわたり続け、2015年5月29日の最大噴火、2018-2019年噴火期と2020年噴火期における放出率変化をとらえてきた。

本セミナーでは、これまでの二酸化硫黄放出率の推移を振り返るとともに、口永良部島で観測された地殻変動との関係について考察する。従来の研究で、地殻変動の力源となるマグマだまりやダイクにマグマが注入する膨張期に、二酸化硫黄放出率が増加することが知られている。本研究では、Kazahaya et al.(2015, JGR)と同様の方法でマグマ脱ガスの影響を加味した上で、マグマだまりへのマグマの注入過程について検討したが、今回はその結果について報告する。