2024年5月10日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, May, 10, 2024

講演者: 森 悠一郎
Speaker: Yuichiro MORI

Title: In-situ P–V–T measurements of dhcp-FeH

鉄水素化物は、「地球核の水素量推定」という地球科学的な側面や「遷移金属の水素化による物性変化」という物質科学的な側面から興味を持たれている。

常温で高水素濃度においで鉄を加圧すると、~3.5 GPa以上でdhcp-FeHx (x~1)を作る。
中性子回折実験により鉄水素化物の構造精密化が行われ、水素原子が1こ固溶することによる単位胞の体積膨張が決定されてきた。これは、水素誘起体積膨張と呼ばれ、鉄水素化物の体積と純鉄の体積差を溶け込んだ水素量で割ることによって求められる。しかし、鉄水素化物の体積と純鉄の体積はそれぞれの弾性定数が支配する状態方程式によって求められる。したがって、これらの体積差も圧力と温度の関数で記述されるはずだ。

これまで、DACを用いたdhcp-FeHxの圧縮挙動測定実験がX線回折によって決定されてきた。純鉄の圧縮曲線と比較することで、ある温度圧力での鉄水素化物と純鉄の体積差(水素誘起体積膨張)の圧力依存性を推定することはできる。しかし、これらの実験は300 Kでのデータに過ぎず、温度依存性についてはデータが非常に不足している。

そこで、dhcp-FeHx の水素誘起体積膨張の温度圧力変化の推定のため、大型プレスを用いた高温高圧実験によって、FeHxの圧縮曲線を測定した。これらの測定による結果は、当初予定していた「水素誘起体積膨張の温度圧力依存性の解明」というコンセプトとは異なる部分もあるものの、興味深い結果が得られた。本発表では上記の結果とそこから得られる考察について述べる。(時間が許せば、NiHxの結果についても多少ご紹介したい)