2023年4月26日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, April, 26, 2024

講演者:嶋 健皓
Speaker: Takehiro SHIMA

タイトル:α-クリストバライト(SiO2)の加熱合成条件の検討及び積層乱れの研究
Title: Investigation of heating synthesis conditions and stacking disorder of α-cristobalite (SiO2)

要旨:
クリストバライトはシリカ(SiO2)の多形の一つであり、天然ではオパールから産出することが知られている。クリストバライトにはいくつかの異なる構造(modification)があり、大気圧下で1470-1728°Cに安定領域を持ち、この条件でのmodificationは立方晶系β-クリストバライトである。また、β-クリストバライトを約268°Cに急冷することで、準安定な正方晶系のα-クリストバライトが生じる。一方、シリカ多形の一つであるトリディマイトの安定領域は、大気圧下において867-1470°Cである。しかしながら、過去には1050°C以上で熱せられたオパール(Jones and egnit,1971)、1000℃のLi 2 WO 4 融液中で3日間加熱した石英(Nukui and Flörke, 1987)、コロイド状シリカと金属酸化物水溶液を混ぜたゲルの900-1200°Cアニーリング(Thomas et al., 1994)からα-クリストバライトが生成することが報告されている。これらの研究より、α-クリストバライトとトリディマイトの温度境界ははっきりと分かっていないが、トリディマイト安定領域でα-クリストバライトが生じることが分かっている。
そこで、α-クリストバライトを合成するための温度条件を検討することを目的に実験を行った。アモルファスシリカと酸化バナジウムを用いたクリストバライトの合成と光学顕微鏡、粉末X線回折法による評価について、方法と結果を発表する。


発表者:伊藤 颯
Speaker: Hayate ITO

タイトル:高圧下その場熱容量測定による氷VIの秩序ー無秩序相転移の観察
Titile: Observation of order-disorder phase transition of ice VI by in-situ heat capacity measurement under high pressure

氷には20種類にも及ぶ多様な多形の存在が知られている。この多様性を生み出している一つの要因は酸素間の水素結合中の水素の秩序化にある。ギブス自由エネルギーG =H-TSであるため、同じ酸素結合骨格に対して、高温側ではエントロピー寄与が大きいために水素が確率的に存在している高エントロピーな無秩序相が出現し、低温側ではエンタルピー的に有利な特定の水素位置のみからなる低エントロピーな秩序相が出現する。
氷VIは常温下で液体の水を加圧していったとき0.9 GPaほどで出現する高圧の氷であるが、現在確認されている中で唯一圧力に応じて二つの秩序相(XVとXIX)へと秩序化することが知られている。このVIの秩序化は、有限温度ではエネルギー的に縮退した複数の秩序ドメインが入り混じった部分秩序構造をなしているというモデルが提案されていたり、秩序化温度が低いために有限時間程度では平衡状態にたどり着かないというガラス的な挙動が存在するなど、実験室の温度・時間スケールでは完全な秩序化は達成されないと考えられている。
そこで本研究では高圧下その場熱容量測定装置の開発を行い氷VIの秩序化を観察した。比熱の積分はエンタルピー、(比熱)/(温度)の積分がエントロピーであることから熱容量の大きさを比較できればその秩序化の度合いが定量的に比較可能であると考えられる。
本発表では、氷VI-XIX間の秩序無秩序転移の熱容量測定を1.6~2.1 GPaの間の4つの圧力点に対して行ったのでその結果を報告する。