2024年11月29日

Date: 16:00-18:00, Friday, November 29, 2024



発表者 : 上園 麻希
Speaker : Maki UEZONO

タイトル: CRCを改良したICP-MS/MSを用いたVOCのフラグメントイオンの測定
Title: Measurement of Fragment Ions of VOCs Using ICP-MS/MS with the Modified CRC

VOCとは揮発性有機分子のことをいい、VOCの一部は大気汚染の原因である毒性物質として作用したり、バイオマーカーのような効果的な医薬品として作用したりする(e.g., Dallinga et al., 2009)。そのため、VOCの迅速かつ高感度・高質量分解能な分析が望まれている。
これまでICP-MS/MSは構造を破壊してしまうために有機分子の分析は困難であった。そこで、ICPで一次イオンを生成し、Q1で任意の一次イオンを選択、CRCからサンプルを導入してCRC内で一次イオンとイオン反応させてイオン化し、Q3で質量分離を行い検出することで、VOCを破棄することなくイオン化し検出できることがわかった(Hirata et al., 2024)。ICP-MS/MSでVOC分析をするにあたり、一次イオンとの反応で分子イオンがフラグメンテーションしているのか、また、一次イオンの選択によりサンプルのフラグメンテーションがどのように変化するかを知ることは重要である。

今回の実験では、酢酸ペンチル(m/z 131)を用いて低m/zでのフラグメンテーションの有無と一次イオンの選択でどのようにフラグメンテーションするかを調べることを目的とし、DBDI-MSでの酢酸ペンチル測定、ICP-MS/MSでの酢酸ペンチル測定、サンプルガス流量または一次イオンを変化させ、フラグメンテーションの変化を検証した。発表では実験で得られた結果から、サンプルガス流量と一次イオン種以外のフラグメンテーションの原因についても考察する。



発表者 : 森田 千歩
Speaker : Chiho MORITA

タイトル: 非晶質炭酸カルシウムの圧力誘起結晶化における圧媒体の影響
Title: Effects of pressure medium on the pressure-induced crystallization of amorphous calcium carbonate

炭酸カルシウムは、常温常圧で複数の形態を取ることが知られている。無水多形は3種類あり、最も安定なcalcite、高温高圧で再安定なaragonite、準安定相であるvateriteである。加えて水和物の2つの疑似多形、一水和物であるmonohydrocalcite、そして六水和物のikaiteがある。またこれらの他にも、非晶質炭酸カルシウム (Amorphous Calcium Carbonate: ACC) の存在が知られている。ACCは組成式 CaCO3・nH2O (n < 1.5) で表される物質で、準安定相であるため、高温、高圧、高湿度などの条件下で容易にcalciteやvateriteなどに結晶化する。特に高圧条件下でACCは、圧が掛かると非晶質が結晶化する、加圧中で水が吐き出される、といった他の物質ではあまり見られない珍しい挙動を起こす。ACCの圧力誘起結晶化には特にACCから吐き出される水が重要だと考えられている。

ところでACCの圧力誘起結晶化について、0.2 – 0.3 GPaという低い圧力で起こるとした報告がある(e.g. Yoshino et al., 2012)一方、ACCの不安定な性質にもかかわらず約20 GPaでも結晶化しなかったという報告もある(e.g. Pennacchioni et al., 2023)、そもそも結晶化の有無が異なる報告がある。この結果の相違について、私は加圧時に用いられる圧媒体の有無やその性質により、ACCから吐き出される水の置かれる環境が変化するためではないかと考えた。

本研究ではその仮説を検証するため、①ACCのみ、②液体圧媒体(Daphne 7373)と混合したACC、③固体圧媒体(MgO, NaCl)と混合したACC、④加熱により含水量を減らしたACC、以上4条件のACCの圧力誘起結晶化を、時分割X線回折を用い観察した。本発表では、この結果とそこから得られる考察を発表する。