2017年4月21日

場 所:化学本館5階会議室
講演者1:山下 修司
タイトル:多様な置換基を有する環状ヘミアセタールエステルの合成および開環重合

自然環境中に遺棄された高分子材料が与える環境負荷は近年問題となっている.環境に対する負荷を低減するため,生分解性,光分解性を始めとする様々な機構により分解する高分子の開発がされているが,種々の高分子材料ごとに分解の条件が限られている.そのため,あらゆる自然環境においても分解する環境負荷の少ない高分子材料を開発するため,一つのモノマー中に異なる機構で開裂する官能基を複数導入し,様々な刺激により分解する新規高分子材料が注目されている(M. Li et al., Polym. Chem. 2015).これまでのところ,二種類の官能基をもつモノマーの重合が報告されている.例えば,エステル結合とアセタール結合を組み合わせたヘミアセタールエステル構造は,熱および酸による分解が可能な動的共有結合であり,この構造が主鎖に組み込まれた高分子は解体性材料として期待されている(M. A. Hillmyer et al., ACS Macro Lett. 2014).

当研究室では,2,6-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキサン-4-オン(DMDO)という化合物に着目した.DMDOはアクリロイル基,エステル結合,アセタール結合の三種類を同一環内に有する多官能性の6員環分子であり,個々の官能基に由来する機能に加えて,複合的な分解機構がある.先行研究では,アクリロイル基のビニル重合ならびに側基ヘミアセタールエステルの加水分解性について報告している(Y. Kohsaka et al., 2016).

先行研究ではアクリロイル基のビニル重合を行ったが,これはDMDOのもつ可能性を一端に表しているに過ぎない.既存の例と異なり,DMDOは加えてアクリロイル基を有するため,さらなる重合・硬化やMichael付加による機能化が可能な点がポイントである.さらに二つの置換基に機能を賦与することも可能である.
本研究では,分解性の高い高分子材料の開発するため,DMDOの開環重合と,DMDOが有する2つのメチル基を他の置換基に置換した環状ヘミアセタールエステルの合成法を検討し,その重合性の評価も行った.加えて,DMDOのビニル基にチオールをMichael付加し,得られる環状分子の開環重合により化学修飾されたDMDOの開環重合体の合成についても検討した.

講演者2:山下 恵史朗
タイトル:チオール保護金25クラスターの光電子分光測定

I will show my works in graduate thesis. Ligand-protected metal clusters exhibit unique electrical, chemical, and optical properties which vary distinctively by the number of constituent atoms. These characters are strongly correlated with discrete nature of electronic structures. In order to directly probe their electronic structures in isolated state, I applied gas-phase photoelectron spectroscopy (PES) in my thesis. I mainly engaged in introducing a magnetic-bottle photoelectron spectrometer (MB-PES) with a newly designed pulsed beam decelerator to the existing apparatus consisting of electrospray ionization (ESI) source, and a time-of-flight mass spectrometer (TOF-MS).