2017年9月29日

Date: 16.00am-18.00am, Friday, 29 September 2017
Place: 5F, Conference room, Main Chemistry Build.
Speaker: Yuichiro Nagai

日 時:2017年9月29日(金)16:00~18:00
場 所: 化学本館5階会議室
講演者: 永井友一朗

タイトル:隕石全岩モリブデン同位体異常から見る初期太陽系の形成・進化

要旨:太陽系の形成・進化は,初期にできた隕石に残されている.初期太陽系は大局的にはよく混合されたと考えられている一方で,隕石全岩には質量分別で説明できないような同位体組成の不均質性(同位体異常)が存在する.近年の隕石全岩に見られる同位体異常から,地球や火星などの前駆体である微惑星は,空間的に異なる2種類の領域で形成したことが示唆されている.このような同位体異常の二分性は,隕石母天体形成領域に存在した特徴的な同位体組成を持つ微粒子に起因すると考えられている.しかし,太陽系の形成・進化にどのように関与したのか明らかになっていない.
本研究では,隕石全岩のモリブデン同位体異常を軸に,同位体異常の二分性を引き起こした出来事を明らかにすることを目指す.モリブデンは隕石全岩において同位体異常の程度が大きいだけでなく,単一元素で同位体異常の二分性が報告されているため,同位体異常の議論に欠かせない元素である.これまで鉄隕石やエンスタタイトコンドライトの高精度分析は行われてきたが,より酸化的環境で形成したと考えられるルムルチコンドライトや炭素質コンドライトはあまり着手されてこなかった.東京工業大学理学院地球惑星科学専攻所有の表面電離型質量分析計を用いて,これらの隕石の高精度モリブデン同位体比分析を行った.本研究および先行研究のデータから,同位体異常の二分性を生みだすために規模の異なる2種類の過程が起きていたことが示唆されている.