2017年10月6日

Date: 16.00-18.00, Friday, 6 October 2017
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker: Katsutoshi Aoki

日 時:2017年10月6日(金)16:00~18:00
場 所: 化学本館3階講義室
講演者: 青木勝敏

タイトル:六方細密充填構造を持つ鉄–水素固溶体の発見:放射光X-線回折と中性子回折実験
Finding Fe–H solid solution with hcp metal lattice: synchrotron X-ray and neutron diffraction experiments

要旨:
太陽系で水素は最も多量に存在する元素であり、鉄は最も多量に存在する金属元素である。両者の相性は悪く、鉄は水素難溶性金属であるが数ギガパスカルの高水素圧下では高濃度の水素化物(固溶体を含む)を形成することが知られている。高圧中性子回折ビームライン(J-PARC)の整備を契機に、それまでの放射光X線回折(SPring-8)に加えて中性子回折を用いた鉄-水素系の高温高圧実験に取り組んできたが、今年度実施した実験においてhcp 構造を持つ水素化物を偶然にも発見した。これまでdhcp(高圧相)および fcc(高温相)構造が知られていたが、純鉄の高圧相hcp-Feと同じ構造を持つ水素化物は報告されていない。
放射光X線回折実験結果の解析から以下が明らかになった。
1.水素組成X~0.5においてhcp構造が出現する。
2.水素溶解エンタルピーは正であり、負のエンタルピーを示すfcc固溶体とは対照的である。
今後進める中性子回折実験結果の解析によって、hcp金属格子中の水素原子のサイト占有率、その温度変化などhcp-Fe(H/D)xの詳細な結晶構造が決定され、その背後にある物理と化学が明らかにされるものと期待される。セミナーでは途中経過の報告になるが参加者の皆さんから質問、コメントを戴いて今後の研究の進め方に反映させたい。