2017年10月13日

Date: 16.00-18.00, Friday, 13 October 2017
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker: Yuuki Tanaka

日 時:2017年10月13日(金)16:00~18:00
場 所: 化学本館3階講義室
講演者: 田中佑樹

Title: Evaluation of the net change in bone volume using Calcium isotope signature

要旨:
生体内のカルシウム同位体組成は、組織ごとに異なることが知られている。脊椎動物の骨には、血液や筋肉などの軟組織と比べて軽いカルシウム同位体が濃縮するという共通した特徴が見られる。加齢や生活習慣病に伴う骨粗鬆症によって、骨組織の溶解と血液中へのカルシウム溶出が増加すると、血液のカルシウム同位体比(44Ca/42Ca)が骨の低いカルシウム同位体比の影響を受けて変動すると考えられる。本研究では腎臓病及び糖尿病のラットから採取した血液及び骨のカルシウム同位体比を測定し、これらの疾患で引き起こされるカルシウム代謝異常とカルシウム同位体比の変化の関係を生理学的な情報と組み合わせて考察した。

腎臓病では骨の溶解(骨吸収)と骨の造成(骨形成)がともに増加し、糖尿病では逆に骨吸収、骨形成とも減少した。骨中のカルシウム量に比例する骨密度の値は腎臓病、糖尿病で正常ラットに比べて低値を示し、どちらも相対的には骨吸収の変化が高まっていると考えられる。腎臓病、糖尿病のラットの血液では、骨からのカルシウム溶出に比例して、カルシウム同位体比が低値を示した。また、骨のカルシウム同位体比は血液の同位体比を良く反映し、病態ごとに有意に変化した。このことから、血液中のカルシウム同位体比は骨カルシウムの正味の増減を反映し、骨にはその変化が記録されるため、どちらの部位においてもカルシウム同位体比はカルシウム代謝の変化を検出するマーカーになることが期待される。本発表は、上記の成果について、地球科学分野への貢献と応用に重点を置いて説明する