Date: 16:00-18:00, Friday, January 9, 2026
講演者:森俊哉
タイトル:桜島における爆発的噴火に伴う二酸化硫黄放出量の推定と火山ガス放出収支への寄与
Title: Estimation of Sulfur Dioxide Emissions from Individual Eruptions at Sakurajima and Their Contribution to Total Volcanic Gas Flux
要旨:九州南部に位置する桜島は、年間数百回の噴火を繰り返す日本で最も活動的な活火山の一つである。同火山で卓越するヴルカノ式噴火は、火道内での火山ガスの蓄積と、それに伴う圧力上昇が噴火の主要な駆動力である。桜島は非噴火時においても準定常的に膨大な火山ガスを放出しており、二酸化硫黄放出量は一日あたり1500tから5000tに達する。
火山活動の推移や地下のマグマ供給系を評価するためには、こうした準定常的な放出に加え、個々の噴火・爆発によって放出されるガス量を把握し、総放出量における寄与を明らかにすることが重要である。
本研究では、2018年から2019年にかけて稼働していた上空二酸化硫黄量観測網によって得られた火山ガス放出率データに基づき、桜島の噴火・爆発に伴う二酸化硫黄放出量の推定を試みた。具体的には、噴火噴煙が観測網に到達した直後に出現するピーク状の放出率変化に着目し、そのピーク波形を時間積分することで放出量を算出した。
解析の結果、当該期間における30個の噴火事例において、多くの噴火で一噴火あたりの二酸化硫黄放出量は3tから25t(中央値16t)の範囲に収まることが明らかになった。この値は、桜島の噴火における火山灰放出量(数百tから数万tオーダー)と比較して2-3桁低い値である。また、前述の準定常的な一日あたりの総放出量(1500〜5000t)と比較すると、一回の噴火による二酸化硫黄放出量は、日総量の1%にも満たないケースが大半を占めることがわかった。
本研究の結果は、仮に該当期間に見られた規模の噴火が一日10回程度発生したとしても、噴火に伴うガス放出量が全放出量の大半を占めることはないことを示唆している。すなわち、桜島における火山ガス放出の大部分は、目に見える爆発的現象ではなく、非噴火時の準定常的な脱ガスプロセスによって担われていることになる。本知見は、地表で観測される爆発現象の規模と、地下からのマグマ供給・脱ガス過程の規模を評価する上で、極めて重要な制約条件を与えるものである。
講演者:澁谷心
タイトル: 非晶質炭酸カルシウム(ACC:Amorphous calcium carbonate)に含まれる水の分析
Title: Analysis of Water in Amorphous Calcium Carbonate (ACC)
要旨: 炭酸カルシウムには、calcite、aragonite、vaterite といった結晶多形が存在する。これらに加えて、非晶質相として非晶質炭酸カルシウム(ACC:Amorphous Calcium Carbonate)が知られている。ACC は化学式 CaCO₃・nH₂O(n < 1.6)で表され、構造内に水を含むことを特徴とする。ACC の結晶化メカニズムは完全には解明されていないが、溶解—再析出機構(Pieter et al., 2012)がよく知られており、ACC に含まれる水の役割が重要であると考えられている。本研究では、ACC に含まれる水の状態に関する情報を得ることを目的として、示差走査熱量測定(DSC)を行った。また、ACC が合成できていることの確認には、X 線回折(XRD)、赤外分光法(IR)、ラマン分光法(Raman)、および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて評価を行った。その結果、DSCの結果に目立ったピークは見られなかった。
また、高温高圧下でACCが存在できるかは議論が続いている。Hou et al.(2019)は、aragoniteが4-6 GPa、1000-1700 Kで非晶質化することを示した。本研究では、無水ACCを出発材料として、高温高圧X線回折実験をPF-AR NE7Aで行った。X線回折は2θ=6 °のエネルギー分散法で測定した。約5 GPaまで加圧後、温度を室温から1500 Kまで上げてX線回折実験を行った。1400 Kでaragoniteの回折強度の低下は見られたが、非晶質化に伴うhaloパターンは観察されなかった。