2019年6月28日

Date: 16:00-18:00, Friday, June 28, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Ryo Ishiyama, Shiori Morii

日 時:2019年6月28日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:石山遼、森井志織

講演者1:石山遼(Ryo Ishiyama)
タイトル:DL-アラニンのメソ結晶を用いた圧力誘起反応の検討
Pressure-induced oligomerization of mesocrystals of DL-alanine 
要旨:生命の起源へとつながる化学進化を考えるうえで、生命の構成要素であるタンパク質を形成しうるアミノ酸の重合反応は重要だといえる。私たちの研究室では、常温高圧条件を想定してアミノ酸の重合反応にアプローチしており、すでに常温高圧条件でのアラニンの重合反応が確認されている。この反応は固相で起きていると考えられ、試料同士の接触面積の増加に伴い反応率が増加するのではないかという仮説を立てている。
 金属酸化物の領域を中心に研究が進んでいる「メソ結晶」と呼ばれる、ナノ粒子から成長しナノスケールの空隙を持つ結晶がDL-アラニンで確認されている。本研究ではより大きな表面積を持つDL-アラニンのメソ結晶に、圧力を付加した際の二量体の生成量を比較することを目的としている。メソ結晶の合成手法、現在得られているメソ結晶、検討中の高圧実験とその分析手法について報告する。

講演者2:森井志織(Shiori Morii)
タイトル:放射性セシウム含有不溶性微粒子に注目した
福島第一原発事故由来放射性セシウムの環境中分布と形態
Distribution and formation of radiocesium derived from Fukushima Dai-ichi nuclear disaster
in environment, focusing on radiocesium-bearing micro particle
要旨:2011年3月、福島第一原発事故により大量の放射性同位体が環境中に放出された。中でも、放射性セシウムである¹³⁴Cs(半減期約2 年)と、¹³⁷Cs(半減期約30 年)は他の放射性同位体と比べて比較的半減期が長いため、現在でも環境中に残存している。事故由来の放射性セシウムは当初、エアロゾル中に可溶体として含まれていると考えられていたが、後に水に不溶である球形のCsの単体粒子、Cs-bearing particle(CsMPs)の存在が明らかになった。
CsMPsは水に不溶な性質から、体内に取り込まれた場合に肺や鼻腔などに吸着し、長時間留まる可能性が指摘されている。そのため、局所的な内部被ばくを引き起こす可能性がある。
本研究では2012 年春に福島県在住の一般市民が日常生活の中で着用した不織布製マスクに付着した放射性セシウムについて、CsMPsに特に注目して分析を行う。
本研究の目的は、放出された放射性セシウムの形態やCsMPsが含まれていた割合について明らかにすること、CsMPsによる内部被ばくの評価に繋がるデータを得ることである。
本セミナーでは現在までに分析をしたマスクサンプルの分析結果、単離に成功したCsMPsの概要等と、今後の計画について述べる。