2019年12月13日

Date: 16:00-18:00, Friday, December 13, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Ryo Ishiyama, Shiori Morii

日 時:2019年12月13日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:石山遼、森井志織

講演者1:石山遼(Ryo Ishiyama)
タイトル:アラニンの圧力誘起重合反応における光学選択性
Title: Optical selectivity in pressure-induced polymerization of alanine
生命の起源へとつながる化学進化を考えるうえで、生命の構成要素であるタンパク質を形成しうるアミノ酸の重合反応は重要だといえる。アミノ酸の起源、その重合反応の解明のため、特定の環境・条件を模した実験や隕石中のアミノ酸の分析等が行われている。私たちの研究室では、常温高圧条件を想定してアミノ酸の重合反応にアプローチしており、すでに常温高圧条件でのアラニンの重合反応が確認されている。比較的低温なためラセミ化が起きにくいと考えられるが、この条件が生命のホモキラリティの獲得へのヒントになるのではないかと考えている。
本研究では常温高圧化でのアラニンのペプチド化に際して、光学選択的に合成が進むかを実験的に測定することを目標としている。物性研での対向アンビル装置を用いた高圧実験、名古屋大学でのGC-MSによる分析を中心に行っている。今までの測定では、L-アラニル-L-アラニンに対してD-アラニンがより付加しやすいという結果が得られている。現在、対照実験や再現性をとるための高圧実験を進めており、その途中経過を報告する。

講演者2:森井志織(Shiori Morii)
タイトル:福島県の一般市民が2012年春に着用したマスクから採取した不溶性セシウム粒子
Title: Radiocesium-bearing micro particles collected from masks worn by members of public in Fukushima in the spring of 2012
2011年3月、福島第一原発事故により大量の放射性同位体が環境中に放出された。中でも放射性セシウムである¹³⁴Cs(半減期約2 年)と、¹³⁷Cs(半減期約30 年)は他の放射性同位体と比べて比較的半減期が長いため、現在でも環境中に残存している。事故由来の放射性セシウムは当初、エアロゾル中に可溶体として含まれていると考えられていたが、後に水に不溶である球形のCsの単体粒子、Cs-bearing particle(CsMPs)の存在が明らかになった。
CsMPsは水に不溶な性質から、体内に取り込まれた場合に肺や鼻腔などに吸着し、長時間留まる可能性が指摘されている。そのため、局所的な内部被ばくを引き起こす可能性がある。
本研究では、2012年春に福島県の一般市民が日常生活の中で着用した不織布製マスクに付着した放射性セシウム(Higaki et al., 2014)について、CsMPsに特に注目して分析を行った。日常生活を送る一般市民に内部被ばくをもたらす放射性セシウムの形態を明らかにするとともに、CsMPsの経時分布や2012年春時点での再飛散の状況について把握した。
本発表ではマスクとCsMPsの測定・分析の結果と、そこから明らかにすることができた放射性セシウムの環境動態、CsMPsの一般市民の内部被ばくに対する寄与について言及する。