2020年2月14日

Date: 16:00-18:00, Friday, February 14, 2020
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Shotaro Oda, Masaki Nakazato

日 時:2020年2月14日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:織田翔太郎、中里雅樹

講演者1:織田翔太郎(Shotaro Oda)
タイトル: L-アラニンの圧力誘起重合反応における出発試料の結晶子サイズと多量体生成量との関係
Title: Relationship between crystallite size of starting sample and yields of multiplier in pressure-induced oligomerization of L-Alanine
アミノ酸の重合反応は、化学進化の重要なステップである。氷天体における化学進化の可能性に着目する我々のグループは、室温高圧条件下でのL-アラニンの脱水縮合反応を見出した。先行研究より、この反応はL-アラニンの結晶構造内ではなく、格子欠陥や結晶粒界などで進行したと推察している。もしそうであれば、結晶性の低いL-アラニンを出発試料として用いることで、多量体生成量は増加すると考えられる。そこで本研究は、圧力誘起重合反応の出発試料として結晶性の低いL-アラニンを用いることで、多量体生成量が増加するか調べることを目的としている。本セミナーでは、これまで得られた結果および今後の展望について述べる。

講演者2:中里雅樹(Masaki Nakazato)
タイトル: ICP飛行時間型質量分析計を用いた隕石中微粒子の組成分析
Feよりも原子番号の大きな重元素の大半はs過程またはr過程を経て合成されたと考えられており、それぞれ計算科学的なモデルが提案されている (Käppeler et al., 2011; Cowan et al., 2019)。一方、これらのモデルに物質学的な制約を与えることも重要であり、隕石中のプレソーラーグレインが注目されている。プレソーラーグレインは隕石のマトリックスに見つかるnm ~ µmサイズの微粒子で、太陽系物質とは異なる同位体組成を示すことから、元素合成過程やその環境に関する情報を保持していると考えられている (Scott and Krot, 2005; Nittler, 2003)。先行研究ではプレソーラーグレイン中のs過程由来の同位体比が多く報告されており、s過程のモデル計算値との比較もなされている (Ireland et al., 2018)。一方でr-プロセス由来の同位体比に関する報告は少なく、モデルに対する制約はあまりできていない。そのため、プレソーラーグレイン中のr過程由来の同位体組成を明らかにすることは、重元素の合成過程を解明する上で重要である。
本研究ではICP-MSを用いて隕石のマトリックス試料を測定し、プレソーラーグレインの特定とその中の重元素の同位体分析を目指す。マトリックス試料の捕集には液相レーザーアブレーション法を試みる。これにより、マトリックスを構成する微粒子の分散液として試料を用意でき、同位体組成を粒子ごとに測定できることが期待される。本発表では、液相レーザーアブレーション法によるコンドライトのマトリックス試料の捕集と、ICP飛行時間型質量分析計 (icpTOF R, TOFWERK) による粒子ごとの主要元素の測定について、結果・考察を紹介する。