2020年7月17日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, July 17, 2020

日時: 2020年7月17日(金)16:00 – 18:00

Speaker: Ryuji Isobe

講演者:  磯部 隆仁

タイトル: 高温高圧下におけるキセノンとポストペロブスカイト構造CaIrO3の反応性
Title: Reactivity of post-perovskite structure CaIrO3 with xenon under high pressure and high temperature


貴ガスはその閉殻した電子殻から安定な化合物を作ることができず、化学的に最も不活性な元素である。とりわけキセノンの反応性については最近に至るまで活発に研究されている分野である。1962年に Bartlettによって最初のキセノン電子供与化合物であるXe(PtF6)が合成されてからほどなく、キセノンのフッ化物や酸化物が合成された。また近年の理論的研究によれば、高圧下で安定なキセノン化合物が存在する可能性が指摘されており、実際にRoss et al. (2016)によるキセノン窒化物の高圧合成の報告などがある。キセノン化合物の研究は、基礎化学だけではなく惑星科学としても意義が大きい。他の貴ガスと比較してキセノンは地球の大気で枯渇しており、地球深部で保持されている可能性が指摘されている。本研究では、地球マントル最下部であるD”層に存在するMgSiO3ポストペロブスカイト相のアナログ物質であるCaIrO3とキセノンの高温高圧下での反応性について調べることを目的としている。今回の発表では、現在まで取り組んできたCaIrO3とキセノンの高温高圧実験および分析実験の結果とその考察について議論を行いたいと考えている。

Speaker: Hayate Ito

講演者: 伊藤 颯

Title: Characterization of amorphous ice by persistent homology


氷のアモルファス固体には低密度アモルファス氷(LDA)と高密度アモルファス氷(HDA)が存在して、これらは圧力によって一次相転移的な変化をすることが知られている。もしこれらが別の相であるならば水の高温での二つの異なる液相(LDLとHDL)の存在と、この二つの液相に対する臨界点の存在が予想される(第二臨界点仮説)。この仮説が正しいとすると水の様々な異常を説明することができる。一方で第二臨界点は直接実験的に観察されておらず、HDA-LDA間の構造の違いに関する知見は乏しいためなぜ水が低温で分離していく傾向にあるのか、そのメカニズムは不明である。よってHDAやLDAに対して構造的な見地から理解することは水の性質のさらなる理解につながっていくと考えられる。近年パーシステントホモロジーを用いてアモルファス構造を特徴付けする手法が開発された。これは様々な距離スケールの秩序構造を可視化して捉えることができ中距離秩序構造が重要と考えられるアモルファスに対して強力なツールとなっている。本研究では分子動力学計算を用いたアモルファス氷の再現とパーシステントホモロジーを用いた中距離構造のHDA-LDA間の分類法および今後の研究の方針について発表する。