2016年12月9日

Date: 4.00pm-5.30pm, Friday, 18 November 2016
Place: Room 1302, Main Chemistry Build.
日 時:2016年12月9日(金)16:00~17:30
場 所:化学本館3階講義室

Speaker1: Ryo Yamane
Title: Development of a Bridgman-Type Large Volume Pressure Cell for Measurement of Dielectric Properties
講演者1:山根 崚
タイトル:誘電率測定用ブリッジマン型大容量圧力セルの開発

水分子は、比較的大きな永久電気双極子モーメントを持つ。そのため、水や氷は、われわれの身の周りにある化学物質の中でも特に高い誘電率をもつ。

歴史的にも、氷VII相の秩序相である氷VIII相は誘電率の大きな減少から見つかるなど、古くから氷の多形の物性研究では電気的な測定が盛んにおこなわれている。最近でも、氷VII相、氷VIII相が安定な圧力領域(10 GPa付近)や氷XI相が安定な温度領域(70 K付近)で誘電率の異常が確認されている。

氷の誘電率測定はこれまで、対向アンビルを電極とした大雑把な測定、ピストンシリンダーを用いた低圧領域(2~3 GPa)での測定、細かな技巧を凝らしたDACでの測定等が行われている。

今回は、以下の3つの点

・汎用性 ・10 GPa程度までの圧力領域への到達 ・大きな電極面積

を実現するセルの開発に向けた工夫、課題などについてお話しする。

Speaker2: Mao Watanabe
Title: Maturity evaluation of source rocks using spectroscopy and biomarkers
講演者2:渡辺 真央
タイトル:分光スペクトル及びバイオマーカーによる石油根源岩の熟成度評価

石油根源岩は石油を産出できる岩石のことであり、ケロジェンと呼ばれる高分子の有機物を含む。ケロジェンの構造は、熟成が進むにつれてグラファイト構造へと変化し、その過程で低分子の有機物(石油やガスとなるものもある)を産出する。これらの有機物について調べることは、石油根源岩の熟成度を見積もる上で重要である。ケロジェンの熟成度評価には様々な手法があり、そのひとつに「ビトリナイト反射率(Ro)測定」があり、温度に変わる指標として広く用いられている。しかしこの手法には、分解能が10μmと低い、試料の準備に手間がかかるといった問題があった。炭質物の熟成度評価の方法に、近年ラマン分光法(分解能が1μm~)が注目されている(e.g. 武田、1988,  Quirico et al., 2005, Kouketsu et al., 2014)。纐纈らは岩石や石炭の熟成度をラマンスペクトルで評価することを試みたが、低熟成度の試料ではラマン散乱よりも蛍光が強く観察されてしまい、ラマンスペクトルが観測できなかった。そこで、蛍光によるベースラインの傾きと切片に着目し、ビトリナイト反射率との相関を見出した。
本研究では、石油根源岩を含む二つの井戸(秋田県の新鮎川AK-1,1050-2700m, MITI 由利沖中部, 600-4900m)より得られた試料を用い、纐纈らと同じ実験条件でビトリナイト反射率とラマンスペクトルの相関を見出し、各井戸の深度による連続性、試料による違いの確認を目的とした。合わせて、蛍光のもととなるケロジェン中の官能基や構造の特定のために、蛍光スペクトルや赤外吸収スペクトルの測定も行い、深度によるケロジェンの構造変化を追った。また、新鮎川AK-1井では、粗粒玄武岩による貫入があることが報告されており(早稲田ら、1995)、反射率の急激な上昇を確認しているが、バイオマーカーによる詳しい分析は行われていない。発表では、ラマンスペクトルと反射率の相関のまとめ、貫入岩付近の試料のバイオマーカー分析の進捗報告を行いたい。