2019年6月21日

Date: 16:00-18:00, Friday, June 21, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Takato Ono, Ko Fukuyama

日 時:2019年6月21日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:大野鷹士,福山鴻

講演者1:大野鷹士(Takato Ono)
タイトル:温泉水の可搬型高頻度自動サンプリング装置の開発: 箱根山におけるテスト観測
Title: Development of potable high-frequency automatic sampling apparatus for hot spring waters: Test observation at Hakone volcano
要旨:火山活動は火山体から大量の熱エネルギーと物質を持続的に放出する現象であり、それを評価する上で火山ガスや温泉水などの火山性流体を地球化学的に観測することは重要である。これまでに火山活動に関連した火山性流体の化学的変動が数多く報告されているが、サンプリング間隔は短くても1か月程度であり、一定期間における数時間から数日スケールの変化を検出することはできていない。火山性流体データを火山活動のモニタリングに使用するためには気象要素や地球潮汐などの非火山性要因による変動の影響を評価した上で、静穏期のバックグラウンドレベルを知ることが求められる。
そこで本研究では、火山性温泉水を対象とした可搬型の自動サンプリング装置を開発することで、安定的な数時間程度の高頻度データ取得を目指している。本発表では箱根山で1か月以上にわたって実施したテスト観測の報告に加え、今後の展開予定や研究方針についてもお話しする。

講演者2:福山鴻(Ko Fukuyama)
タイトル:Periclase (MgO)への窒素取り込みの検討とマグマオーシャン固化による窒素貯蔵庫の形成
Title: Nitrogen incorporation into periclase (MgO) and the formation of nitrogen reservoir through the solidification of magma ocean.
要旨:窒素は地球大気の約8割を占め、生命の必須元素であることから、地球における気候、生命起源を議論するうえで重要な揮発性元素である。しかし依然として、地球内部における窒素の挙動については詳細に理解できていない。例えば、コンドライト組成によって規格化された現在の地球の窒素存在量は、他の揮発性元素の1/10未満と相対的に枯渇している (Marty, 2012)。この窒素が枯渇する原因として、マグマオーシャンの固化を経ることにより、マントル鉱物が窒素を地球深部に貯蔵した可能性が示唆されてきた(e.g. Li et al., 2013; Yoshioka et al., 2018)。しかし、地球で最も容量が大きい下部マントルでの窒素の貯蔵に関する実験回数は十分でなく、bridgmaniteとCa-perovskiteへの窒素取り込みに関する実験研究はYoshioka et al. (2018)の1報のみである。特に下部マントルで2番目に存在量を占めるpericlaseに関しては、まだ実験例が報告されていない。
 本研究では、下部マントルへ窒素を貯蔵しうるpericlaseに窒素がどれほど取り込まれるか検討するため、28 GPa、1500 ̊C-1600 ̊Cの条件で高温高圧実験を行った。実験には愛媛大学GRCのマルチアンビル高圧発生装置を使用し、下部マントル相当の酸化還元状態のコントロールにはFe-FeO bufferを用いた。急冷回収試料中の窒素の分析には大気海洋研究所のNanoSIMSを使用し、窒素を15N16O-として検出した。
 現時点で、periclaseのSIMS分析ができている回収試料は1つのみであり、検出量のみの比較ではあるが、bridgmaniteよりもはるかに多くの15N16O-がpericlaseから検出された。このことは、bridgmaniteよりもpericlaseの方が多くの窒素を取り込むことを示唆する。まだ分析が十分ではないが、マグマオーシャンの固化過程において、periclaseが窒素貯蔵庫形成の主な役割を担う可能性があるため、現在の進行状況を交えながら紹介する。