2019年10月11日

Date: 16:00-18:00, Friday, October 11, 2019
Place: 3F, Lecture room, Main Chemistry Build.
Speaker:Mai Akamune, Ryuto Isobe, Numa Norika

日 時:2019年10月11日(金)16:00-18:00
場 所:化学本館3階講義室
講演者:赤宗舞,磯部隆仁,沼倫加

講演者1:赤宗舞(Mai Akamune)
タイトル:ナノ粒子のマトリックス効果による影響の検証
Title: Influence of matrix effect on nanoparticle
要旨:隕石中に含まれるプレソーラーグレインは、太陽系形成以前の同位体情報を持っていると考えられている粒子である(Lewis and Anders,1983)。このプレソーラーグレインの同位体組成を分析することで、太陽系形成以前の元素がどのような組成をしていたかの情報を得ることができる。元素の合成過程を解明するためには、軽元素・重元素ともに分析する必要がある。先行研究では、炭素や窒素のような軽元素に関する報告が多く、プレソーラーグレインの粒子毎の発生起源について解明されている(Hoppe and Ott,1997)。一方で重元素に関する報告は少ないため重元素の元素合成に関する物質学的制約はほとんど与えられていない。こうした背景から、本研究ではプレソーラーグレイン中の重元素の元素比および同位体比を測定することで、重元素の元素合成過程に制約を与えることを目指す。
本研究では、誘導結合プラスマ質量分析計(ICP-MS)を用いてプレソーラーグレイン中の同位体分析を行う。ICP-MSは微小粒子の元素組成・粒径の分析に広く用いられている(Kobayashi,2016)。ICP-MSは高感度測定が可能であるが、共存元素によるマトリックス効果の影響を大きく受ける。このマトリックス効果により対象元素のイオン化率の低下に加え空間電位効果が生じることによって、信号強度が低下してしまい、その結果定量分析精度が低下してしまうことが知られている(Hirata,1996)。そこで本発表では、予察的実験として、粒径や個数濃度が異なる銀と白金のナノ粒子の懸濁液を分析することで、マトリックス効果による定量分析精度への影響に関する検証を行った。試料は粒径20 nm、40 nm、60 nmの銀ナノ粒子(20±4 nm、40±4 nm、60±8 nm)と粒径30 nm、50 nm、70 nmの白金ナノ粒子(30±3 nm、46±5 nm、70±4 nm)を用い、それぞれを超純水中に希釈した。計測には磁場型ICP-MS(Nu Instruments社製AttoM)を用いた。本発表では、ナノ粒子の粒径や個数濃度が異なる場合のマトリックス効果を検証した結果とその考察について紹介する。

講演者2:磯部隆仁(Ryuto Isobe)
タイトル:ダイヤモンドアンビルセルを用いたグラファイトの高温高圧実験
Title: High-temperature and high-pressure experiment of graphite using diamond anvil cell
要旨:グラファイトの高温高圧実験は多岐にわたって行われており、代表的なものにはダイヤモンド化や層間化合物についての研究などがあげられる。本研究は、ダイヤモンドアンビルセルを用いてグラファイトの高圧条件での変化をメタノール/エタノールや窒素などの圧力媒体を変えて測定し、圧力媒体ごとの違いを調べ、さらに窒素を圧力媒体とした条件ではYAGレーザーとCO2 レーザーを用いて高圧下で試料を高温状態にして変化が起こるかについて調べた。また、今後の実験に必要になる装置について取り扱いを学んだ。最後に、卒業論文に向けて取り組む今後の研究の方針についても紹介する。

講演者3:沼倫加(Numa Norika)
タイトル:ICP-MS法の透過効率に関するナノ粒子の粒径への影響:隕石中ナノ粒子の初等的同位体分析のための重要な評価
Title: Effect of size of nanoparticles on transmission efficiency of the ICP-MS technique: critical evaluation for elemental and isotope analyses of single nanoparticle in meteorites
要旨:プレソーラーグレインは、太陽系形成以前に恒星の周囲にあった固体の微粒子である。微惑星が衝突や合体する過程で加熱されたために太陽系内で溶融が起きている可能性が高く、太陽系の物質とプレソーラーグレインの同位体比は同じになると推測できる。しかし、プレソーラーグレインは太陽系の物質に対して同位体異常を示すことが知られている。同位体異常を示すとプレソーラーグレインが何起源であるか区別できるため太陽系以前の情報を持っている可能性があり注目されている。先行研究(Davis 2011)では、プレソーラーグレインの軽元素の同位体比を測定、プロットがされているが、重元素ではこのようなプロットが作成されていない。このような背景から、プレソーラーグレイン中の重元素の同位体比を測定することでプレソーラーグレインが何起源であるか区別でき、元素合成起源や太陽系形成過程の解明ができると考えられる。
プレソーラーグレインのような微小粒子の元素組成・粒径の分析法として誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)が利用できる。ICP-MSは高感度かつ元素選択性を有する分析装置であることから、近年ではナノ粒子の分析に応用されているが、粒子一粒あたりのイオン透過効率(イオン源から検出器までの輸送効率)に関する報告は少ない。プレソーラーグレインのような希少かつ未知試料の分析において分析可能な粒径をあらかじめ見積もることは試料のロスの低減等に必要であり、分析に必要なプレソーラーグレインの粒径の推定を可能とする。そこで本研究では予察的実験として、ナノ粒子一粒におけるイオン透過効率の算出に加え、元素の違いによる透過効率の変化を検証した。試料はnanoComposix社から市販されている粒径10、20、40、60、100 nm銀ナノ粒子と粒径30、50、70 nm白金ナノ粒子を用い、計測には磁場型ICP-MS(Nu Instruments社製AttoM)を用いた。本発表では分析条件の違いによる透過効率への影響とその考察を述べる。