2020年5月29日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, May 29, 2020

日時: 2020年5月29日(金)16:00 – 18:00

Speaker: Keishiro Yamashita
講演者: 山下 恵史朗
タイトル: 氷VII中の核密度分布に対する単結晶中性子回折と最大エントロピー法を用いた解析   
Title: Single-crystal neutron diffraction and maximum entropy method analysis on nuclear distribution in ice VII  

氷VIIは数多くある氷の多形の一つで、約2-60 GPaと広い圧力範囲で安定である。bcc構造の氷VII中では、水分子は最近接の8つの水分子の内4つの水分子と水素結合している。水素結合の有無によって酸素間距離が異なるはずだが、これまで全て平均位置として解析され構造モデルには反映されていない。本研究では、新規に開発した高圧セルを利用してフランスのグルノーブルにある原子炉施設Institut Laue-Langevin(ILL)で高圧下単結晶中性子回折実験を行った。その結果を基に、従来の結晶学的な方法と統計理論から導入された最大エントロピー法を併用して氷VII中の各密度分布に対する解析を試みた。発表では解析に用いた最大エントロピー法(MEM)の簡単な説明とともに、氷VII中での各密度分布の解析結果を報告する。


Speaker: Masaki Nakazato
講演者: 中里 雅樹
タイトル: ICP飛行時間型質量分析計を用いたコンドライトのマトリックス中微粒子の元素分析   
Title: Elemental analysis of nanograins in matrix of chondrite using ICP-Time-of-Flight-mass spectrometer


コンドライトのマトリックスはnm ~ µmサイズの微粒子から構成されており,微粒子ごとに形成過程や形成環境が様々であると考えられている (Scott & Krot, 2005).これらの中には太陽系平均と異なる同位体組成を示す微粒子も存在し,プレソーラーグレインとして知られている.プレソーラーグレインは元素合成時の同位体組成を保持していると考えられており,これを明らかにすることで元素合成過程やその環境に関する物質学的な制約を与えることができる.先行研究では,隕石マトリックスの酸分解によりプレソーラーグレインを単離するケースが多かったため,酸耐性のあるSiCなどの粒子に関する実験結果が多く報告されている (e.g. Stephan et al., 2019).一方,酸耐性の低いケイ酸塩などの粒子に関する同位体分析の報告は多くない.そこで本研究では,液相レーザーアブレーション法により酸耐性の低い粒子も分析対象としながら,ICP-MSを用いた単一粒子の元素・同位体分析によりプレソーラーグレインを特定することを目標とする.本発表では,ICP飛行時間型質量分析計(icpTOF R, TOFWERK)を用いて粒子ごとの主要元素比を分析した結果を紹介する.