2020年5月22日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, May 22, 2020
日時: 2020年5月22日(金)16:00 – 18:00
※zoomを使用

Speaker: Riko Iizuka
講演者: 飯塚 理子 先生
タイトル: 鉄ー含水シリケイト系の中性子その場観察による鉄水素化物中の水素の定量
Title: Determination of hydrogen content in iron hydrides on Fe-hydrous silicate system using in-situ neutron observations

現在の地球中心コアの主成分である鉄には、純鉄からの密度欠損を説明しうるために軽元素(S, Si, O, C, H など)が溶け込んでいると考えられている。候補の1つである水素は、水を介した酸化還元反応を経て鉄水素化物として鉄に取り込まれる。しかし、高圧下でしか水素は有意に鉄に溶け込まず常圧下で抜け出てしまう上に、従来のX線を用いた測定手法では軽い水素を直接検出できないという実験上の制約があった。このため、これまで難しいとされていた鉄に固溶した水素量の定量が、高温高圧下での中性子回折その場観察によって可能になってきた。また、Fe-FeS系での融点はさらに下がることが知られており、地球の形成初期段階において、水素と同様に硫黄も鉄に優先的に取り込まれたことが予想される。本研究では、鉄の密度・融点を大きく下げる水素と硫黄の2つの軽元素に着目し、原始地球の組成に見立てた試料系での高温高圧実験を行い、鉄の水素化反応に対して硫黄が及ぼす影響について明らかにすることを試みた。
 初期試料はFe(+S 5-10wt%)の粉末、モル比1:1のSiO2とMg(OD)2(やMgO)の混合粉末をそれぞれ調整し、サンプルカプセル内でFeのペレットが中心に位置するように充填した。高温高圧実験は、J-PARC, MLFの高圧ビームラインPLANETに設置された大型6軸プレス圧姫を用いて行った。6-7 GPa, 850-1000 Kと10-12 GPa, 750-1200 Kの圧力温度範囲で、重水素化させたFeの高温高圧相(hcp相とfcc相)の中性子回折パターンを取得し、水素量を決定した。実験後に回収した試料の微小部X線回折測定とSEM-EDS分析を行い、反応生成物と元素の分布を調べた。発表では、Feの水素量の温度圧力依存性および硫黄の有無について比較した結果を紹介し、地球形成初期における鉄の軽元素の取り込み過程について考察したい。