2021年11月26日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, November 26, 2021 

発表者:森 悠一郎

Speaker: Yuichiro Mori

Title: Deuterium-induced volume expansion of hcp-Fe0.95Si0.05 

~ Investigation into the effect of Si dissolution on iron hydrogenation ~

地震波速度と密度の関係より、地球のコアの密度は、相当する温度圧力条件下での純鉄の密度よりも数%低いことが知られている。これは、鉄よりも軽い元素「軽元素」が核に固溶しているためだと考えられてきた。有力な軽元素候補の一つとして水素が挙げられるが、実験の技術的な困難さもあり鉄-水素系の高温高圧実験は直下の課題と言える。

高圧下において、水素は鉄に固溶し鉄水素化物をつくる。一方で、鉄水素化物を常圧に回収することは困難であるため、鉄水素化物を直接観察するには高圧下でのその場観察が必須である。高圧実験では放射光X線によるその場観察実験が多く行われてきたが、電子との相互作用による散乱を見るX線回折では軽元素の量や固溶サイトなどを直接決定することはできない。一方で、中性子回折はX線回折と異なり、散乱断面積が原子番号に依存しないため金属水素化物中の水素を可視化するための強力なツールである。この特性を活かし、これまでJ-PARC MLFにある高圧下中性子回折専用を目的としたビームラインBL11 (PLANET)にて、鉄中の水素の固溶サイトや水素量の直接決定を目的とした実験が行われてきた。しかし、これまでの高温高圧下中性子回折を用いた実験研究は単純な鉄–水素 二成分系で行われ、実際の地球核に含まれると予想されている他の成分の影響は未解明である。そこで、我々は水素の他にシリコンが固溶した鉄–シリコン–水素三成分系に着目し、高温高圧下放射光X線回折並びに中性子回折の実験を行っている。本発表ではシリコンが固溶することによる鉄水素化物生成への影響についてこれまでの結果と今後の取り組むべき課題を発表したい。

発表者:森 俊哉

Speaker: Toshiya Mori

タイトル:上空二酸化硫黄測定観測網でとらえた桜島火山の二酸化硫黄放出率:爆発噴火に関連した放出率変化
Title:Sulfur dioxide flux observed by upward-looking UV spectrometers’
network: Flux variation related to explosive eruptions

要旨:
桜島は年間数百回の爆発的噴火を繰り返す、世界有数の活発な火山である。桜島で頻繁に見られるブルカノ式噴火は、数秒から数分の短い継続時間と低噴出量の単発的な爆発が特徴の噴火である。ブルカノ式噴火の描像では、火道浅部にできた蓋の下の高圧源形成とその高圧源による蓋の破壊と火道の急減圧が考えられている。これまでの火山ガスの観測では、噴火の前に火道内でのガスの蓄積によると考えられる放出率の減少が観測されている。
この桜島において、2017年から上空二酸化硫黄測定観測網を構築を始め、2018年度から二酸化硫黄放出率のモニタリングを行ってきた。昨年度からスペクトルの再解析を行い、新たに放出率を求めなおした。今回のセミナーでは、桜島での観測の概要を説明するとともに、二酸化硫黄放出率の予備解析の結果から見えてきた噴火に関わる放出率変化について紹介する。