2021年12月3日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, December 3, 2021 

発表者:角森史昭

Speaker: Fumiaki Tsunomori

タイトル:火山・地震活動の時間的推移を追跡するための地下水溶存ガス観測

Title: Groundwater Gas Observation for Tracking Volcanic and Seismic Activity.

日本の南西部では、北西に移動するフィリピン海(PHS)プレートがユーラシアプレートの下に沈み込み、これにともなって特徴的な火山・地震活動がおきている。紀伊半島から九州までの領域を南海トラフと琉球海溝で分けると、火山・地震活動の特徴に差が見受けられる。南海トラフからの沈み込みでは、三瓶山と阿武火山群をのぞいて火山活動は低調だが、外弧域には多くの有馬型温泉が湧出しその直下に深部低周波地震の帯が認められている。琉球海溝からの沈み込みでは、九州にある多くの火山が活動しているが、外弧域には有馬型温泉の湧出や深部低周波地震の発生は認められていない。どちらも、PHSプレートの沈み込みにともなう温度と圧力の上昇が引き起こす脱水反応が作り出したスラブ起源流体が原因となる活動である。Giggenbachをはじめとして多くの地球化学者・火山学者によって火山ガスや温泉水・地下水などが調べられ、スラブ起源流体の化学的指標が知られている。近年、この指標を使ったPHSプレートの沈み込みにともなう、日本の南西部での火山・地震活動の空間的な特徴を説明する研究が多く行われている。

 スラブ起源流体の化学的指標が分かっているので、この指標を使った火山・地震活動の時間的な特徴を追跡できないかを試みる観測を行っている。希ガス同位体比・酸素水素同位体・炭素同位体・溶存イオン組成などの分析値がその指標であるけれども、それらの値は持ち帰った試料を分析することで取得される。装置の管理や分析精度の維持のためには装置を実験室で運用することが必要であり、残念ながら活動の時間的な特徴を追跡したいという要求に対応することが困難である。多くの化学指標のうちGiggenbach(1992)が提案した「ヘリウム・窒素・アルゴンの三成分組成」の指標は、ヘリウム同位体比が高いという条件下で安山岩質マグマ起源ガス・玄武岩質マグマ起源ガス・大気起源ガスの混成を議論するために利用できる。ヘリウム・窒素・アルゴンは、市販の残留ガス分析計(電子増倍管を検知器に採用した四重極質量分析計)で十分分析が可能であることから、市販の残留ガス分析計を改造して野外での連続運転を実現すれば、目的を実現できるかも知れないと考えた。

 南海トラフの外弧に位置する本宮温泉(HON)と、琉球海溝の火山弧に位置する阿蘇カルデラ内の内牧温泉(ASO)および2016年熊本地震の震源断層直上の温泉(KUM)の計3カ所に、2008年から改造・改良を行ってきた野外観測用の残留ガス分析計を設置して、4月から観測を開始した。HONでは、いくつかの問題からまだ満足なデータ蓄積が行えていない。一方、ASOとKUMでは問題なく観測が進行しており、データの蓄積を進めることができている。これらの観測の現状を今回のセミナーで紹介する。

発表者:宮原秀一 

Speaker: Hidekazu Miyahara 

タイトル:研究機関における特許に関する基礎知識と守秘義務
2004年の国立大学の独法化に伴い「稼ぐ大学」への急激な転換を求められ、特許をはじめとする知的財産権の獲得と活用に目が向け始められた。過熱する知財創出への要求から2010年初頭には「大学は知的財産権創出の源泉であるべき論」まで飛び出し、大学の独立性、そして「自由な発想、自由な研究」の保証を危ぶむ声も聞かれたほどである。しかし、この思想、裏を返せば「研究者個人の知財を大学が責任をもって発掘、保護、活用する」ことを明言しているに過ぎず、決して「自由な研究」を阻害するものでは無く、むしろ発明者の権利を守るための道が開けたともいえる。とはいえ、研究者が特許を取得するにはいくつかのハードルがあり、今回はその一つである、日本と一部諸国の特許制度について、簡単なあらましをご紹介するとともに、研究の遂行と発表を阻害することなく、有効に特許を取得するために必要となる、守秘義務契約に関する基礎知識について紹介する。