2022年3月4日

Date: 17:00 – 18:00, Friday, March 4, 2021

発表者:日比谷 由紀 (角野研究室 助教)

Speaker: Yuki Hibiya

タイトル:バーバートン緑色岩体におけるスフェルールのクロムーチタン同位体分析

地球上の主要な隕石衝突イベントの最古の記録は、南アフリカのバーバートン緑色岩帯で確認された始生代初期(3.47~3.24 Ga) の8つのスフェルール堆積層 (S1~S8) とされている。しかし、この地域は広範な変成・変質作用を受けているために、衝突インパクターの性質を制約することは極めて困難である。また、火山噴火による火山豆石と隕石衝突で形成されたスフェルールの組織学的類似性から、スフェルールが隕石衝突起源であることを疑問視する研究も存在する。これらの問題を解決するために、本研究では、自身が開発した惑星物質を対象とした高回収率クロム-チタン分離法を、S3層の砂岩と火山礫、S2層の礫岩から抽出した球状粒子に適用し、高精度同位体分析を行った。その結果、S3層の火山礫中の火山灰で構成される球状粒子(火山豆石と思われる)からは同位体異常が検出されなかったものの、S3 層砂岩中の不透明鉱物を含む球状粒子(衝突起源スフェルールと思われる)からは53Crと 54Crの過剰が検出された。このことは、衝突インパクターが炭素質コンドライト的な物質であったことを示唆し、太陽系遠方領域で集積したこれらのコンドライトが、始生代初期 (~3.24 Ga) には太陽系内側領域の初期地球周辺に存在していた可能性を示唆している。本発表では、現在までに明らかになりつつある炭素質コンドライトの種類および今後の研究予定についてお話しする。