2022年2月18日

Date: 16:00 – 17:00, Friday, February 4, 2022

発表者:小長谷智哉 (角野研究室 PD)

Speaker: Tomoya Obase

タイトル:太平洋プレート西端直下マントルの希ガス同位体組成

マントル上部の希ガス同位体組成は、各地の中央海嶺玄武岩の急冷ガラスに含まれる希ガス組成の類似性から概ね均質だと考えられてきた。ところが、中央海嶺から離れた地域のマントル希ガス組成は未解明であり、深部マントル希ガスの付加・大気希ガスのリサイクル・化学組成の不均質等の作用により中央海嶺下とは異なる可能性がある。
本研究では、沈み込む太平洋プレートの屈曲場に産するプチスポット玄武岩の急冷ガラスに含まれる希ガスの同位体組成を詳細に測定し、中央海嶺から遠く離れた地域のマントル希ガス組成を明らかにした。その結果、当地域下のマントルNe・Ar同位体組成は中央海嶺下とほぼ一致した。このことから、マントル上部の希ガス同位体組成は広い範囲で概ね均質である可能性が高い。また、試料中のCO2/Ne比も中央海嶺玄武岩と一致した。これらの結果は、マントル上部における揮発性成分の均質性を示唆する。
玄武岩急冷ガラス試料からマントル希ガス組成の議論を行うためには、希ガス抽出時の大気希ガスの混入をなるべく抑える必要がある。今回の分析では、UVレーザーを用いて試料中の気泡から選択的に気体を抽出する手法を試みたが、大気希ガスの混入をかなり減らすことができた。本発表では、従来行われてきた破砕抽出や加熱抽出による結果との比較も行う