2022年3月14日

Date: 16:00 – 17:00, Friday, March 11, 2022

発表者:角野浩史 (総合文化研究科 准教授)

Speaker: Hirochika Sumino

タイトル:沈み込み帯の火山岩やかんらん岩、変成岩のハロゲン・希ガス組成からみたマントルウェッジ中の揮発性成分循環


ハロゲン(F、Cl、Br、I)は揮発性・液相濃集性が高いため、海洋、堆積物、地殻などの表層のリザーバーに高濃度で存在し、その元素比もリザーバーごとで大きく異なることから、地球表層-マントル間での物質循環、とくに水循環のよいトレーサーになると期待される。マントル物質中のハロゲンはその低い濃度から従来の手法では分析が困難であったが、近年は原子炉内で試料に中性子を照射し、核反応によりハロゲンを希ガス同位体に変換し、その希ガス同位体を高感度希ガス質量分析により定量する手法によって高感度分析が可能になっている。また最終的には希ガスとして分析するため、中性子を照射していない試料の希ガス同位体分析と同じ希ガス抽出法を用いることで、ハロゲンと同じく揮発性・液相濃集性が高く、マントルと表層で大きく同位体比が異なる希ガスから得られる情報と直接対比することができる。これまでに、この手法を用いて得られた中央海嶺やホットスポットの玄武岩ガラス、マントルかんらん岩やダイヤモンド、沈み込み帯の火山岩や蛇紋岩をはじめとした変成岩のハロゲン・希ガス組成を指標として、水を主とした揮発性成分の地球内部での物質循環が明らかになりつつある。本セミナーでは主に、沈み込み帯に産する火山岩やかんらん岩、蛇紋岩、エクロジャイトなどのハロゲン・希ガス組成から示唆されるマントルウェッジ中の揮発性成分循環について紹介する。