2022年8月5日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, August, 5, 2022

発表者:堀越洸

Speaker :  Ko Horikoshi

タイトル:Heを使用しないレーザーアブレーション-ICP-MS(LA-ICP-MS)法の開発

Title : Development of a Laser Ablation-ICP-MS (LA-ICP-MS) system setup without using He carrier gas

レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS法)とは大気圧高温プラズマをイオン源にレーザーアブレーション試料導入法を組み合わせた固体試料分析法である。LA-ICP-MS法には、大気圧下でのサンプリング、前処理が簡便という特長がある。このような点から、LA-ICP-MS法はルーチンとして定量分析や同位体分析に応用されている(e.g., Makino et al., 2019; Hirata et al., 2020)。
一般的なLA-ICP-MS法では、He雰囲気下でLAが行われる。これはHeは粘度が低く、熱伝導率が大きいという性質に起因している。結果としてHe雰囲気下でLAを行うと小さなエアロゾルが生成し(Horn and Günther, 2003)、信号の高感度化、安定化が得られる。しかし、Heは資源枯渇の影響から安定供給が困難になり、分析の制約が危惧されている。そのため、LA-ICP-MS法を活用し続けるためにはHeを使用しないLA-ICP-MS法の開発が必要である。
Ar雰囲気下でLAを行うと生成するエアロゾルが大きくなり、エアロゾルの再沈着や信号の低感度化、不安定化という問題が発生する。エアロゾルの再沈着などを低減するためには減圧下でLAを行うことが有用である(Hirata, 2007)ことが報告されている。しかし、この先行研究では減圧にするために真空ポンプを使用するなど、装置のセットアップが複雑で最適化が困難という課題がある。そこで本研究では流速を大きくするほど圧力が小さくなるベンチュリー効果に着目し、簡易的に減圧効果が利用可能なレーザーセルを作成した。本発表では作成したレーザーセルを利用してLAを行った場合と通常のレーザーセルを使用してHe雰囲気下、Ar雰囲気下でLAを行った場合の比較を行った結果について報告する。

発表者:横倉伶奈

Speaker :  Lena Yokokura

タイトル:局所測定によるマントル捕獲岩中包有物の希ガス同位体比-背弧域大陸下マントルの希ガス同位体不均質の起源の直接的制約

鉱物や岩石から抽出した希ガス同位体比の測定は、試料から抽出された成分の起源を調べるために有効である。中国東北部のロンガン火山群は,沈み込んだスラブに関連する成分の影響が予想される.同火山で噴出した5つのマントルゼノリスは、1-2 gのカンラン石粒を粉砕した結果、6.45 Raから0.14 Raを示した。破砕法によって比較的高い3He/4He(Ra)を示した試料は、顕微鏡観察上CO2流体包有物(ネガティブクリスタルタイプ)が多く、5つのゼノリスサンプルの値の大きな不均質の原因は鉱物粒内のCO2流体包有物とメルト包有物の量比にある可能性が浮上した.

実際に包有物の量比から固有のガス濃度や同位体比を最小二乗法で予想すると,より成熟度が高い包有物に比較的高いヘリウム同位体比が含まれる可能性が示唆された.この予想を評価するため、局所レーザーアブレーションによってCO2流体包有物の希ガス同位体比を測定した。研磨したカンラン石表面に紫外線レーザー(UP-213、New Wave Research, Inc.)で直径約100-200ミクロンの孔を開けてCO2流体包有物のガス抽出を行い,希ガス同位体比を分析した.その結果、CO2流体包有物の3He/4He(Ra)と40Ar/36Arは、同じゼノリスのカンラン石1-2 gを粉砕法で抽出したものよりいずれも高い傾向を示すことが判明した。これは、5つのマントルゼノリスの希ガス同位体比が、オリビンに含まれる包有物タイプの分布に依存する可能性が高いことを示唆している。また鉱物中のメルトインクルージョンが, 沈み込んだスラブ物質に由来する低い3He/4Heのホストになっている可能性が示された.