2022年7月29日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, July, 29, 2022

発表者:伊地知雄太

Speaker :  Yuta Ijichi

タイトル:XAFS分析による炭酸カルシウム中不純物二価金属の局所構造解析

Title : Local structure analysis of impurity divalent metals in calcium carbonate by XAFS analysis

地球表層環境において、炭酸カルシウムは主にカルサイト・アラゴナイトの結晶多形で生成する。常温・常圧の環境ではカルサイトが安定に生じるが、現代の海水などカルシウムイオンに対してマグネシウムイオンが多量に共存する環境ではアラゴナイトが生じることが知られている(Stanley and Hardie, 1999)。さらには、カルシウムイオンに比べてイオン半径が小さい他の二価金属イオンが共存する系でもアラゴナイトが生成しやすくなることが室内実験により報告されている(e.g. Kitano 1969)。しかし、アラゴナイト中の陽イオン席は九配位構造を持つ一方で、マグネシウムイオンなどの比較的小さなイオンは炭酸マグネシウムなどそれぞれが主成分となる炭酸塩は陽イオン席がより低配位な六配位であるカルサイト構造を持つ。これら小さな金属イオンを添加して生じたアラゴナイト中での添加イオンの構造は未だ理解されておらず、結晶多形選択に及ぼす影響には統一的な解釈が得られていない。そこで本研究では、X線吸収端微細構造解析法(XAFS)を用いて炭酸カルシウムへ添加した二価金属の局所構造解析を試みる。今回の発表では、カルシウムイオンと比べて小さなイオン半径を持つコバルトイオンとニッケルイオンをカルサイト・アラゴナイトに添加した実験結果について議論する。

発表者:村上喬紀

Speaker :  Takanori Murakami

タイトル:X線回折によるNH4Clの相転移の観察

Title : The observation of the phase transition of NH4Cl by X-ray diffraction

NH4Clは、室温においてはCsCl型構造(空間群:Pm3 ̅m)の無秩序相(II相)であるが、-30 oCで空間群: P4 ̅3mの秩序相(IV相)へと転移する(Yurtseven et al., 2007; Heyns, 1980)。相転移温度は圧力とともに上昇し、室温下でも約0.9 GPa以上で秩序相となる。また、更に加圧すると11 GPa以上でV相へと転移することが知られている。この圧力誘起相転移については、多くの先行研究があるものの、意外にもX線・中性子回折法による構造研究例はほとんどない。そこで、本研究ではX線回折を用いてNH4Clの圧力誘起相転移時の構造変化を捉えることを目的とした。
 今回、試料であるNH4Cl粉末を圧媒体であるヘリウムとともにダイヤモンドアンビルセル(DAC)に封入した。本実験では、DACを加圧し、X線回折パターンを取得することで、まだ結晶構造が決定されていないNH4ClのV相の構造の解明を試みた。また、低温領域におけるNH4Clの挙動を調査すべく同様にX線回折を用いた。
 本発表では、これまでに得られた実験結果について紹介する。