2022年10月21日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, October, 21, 2022

発表者;高久侑己

Speaker:Yuki Takaku

タイトル:福島第一原発事故直後に東京周辺の広範囲に飛来した CsMPs の分析

Title : Analysis of Cesium-bearing microparticles (CsMPs) widely spread around Tokyo immediately after the FDNPP Accident

 2011年の東日本大震災に伴う福島第一原発事故により膨大な量の放射性物質が環境中に拡散され、現在も深刻な問題となっている。その主な原因となっているのは半減期が約30年と長い137Csである。放射性Csは原子炉内の235Uの核分裂反応により、生成される。そして事故時にはほとんど気体状態になっており、環境中に拡散された後地面に落ちて鉱物の粒に融合したと考えられている。しかし、一部はµmサイズの粒子に取り込まれ、環境中に放出されたといわれており、その粒子をCsボールという。

 Csボールとは、福島原発事故後に発見された不溶性かつ高Cs比放射能を持つ微粒子で、2、3号基由来のType-Aと呼ばれる基本的には球形かつ、粒子サイズが 1 ~ 10 µmのものと、1号基由来のType-Bと呼ばれる不定形で粒子サイズが 50 ~ 400 µmのものが存在する。また、Csボールの放射能比134Cs/137Csを算出することでタイプの分別を行うことができる(Type-A : 134Cs/137Cs = 1.08 (2号基) ~ 1.05 (3号基)、134Cs/137Cs = 0.94)。事故当時の風向き等の気象条件により、Type-Aは福島県のみならず関東地方の広範囲に飛来したと言われており、Type-Bはサイズが大きく飛来しにくいことから福島原発周辺にて発見された報告例しか存在しない。しかし、本学のアイソトープ総合センターに所属する桧垣先生らにより、事故後数日経った時期に関東地方の6カ所 (茨城県東海村、牛久市、千葉県千葉市、我孫子市、埼玉県川口市、東京都荒川区) にてスミア法を模した手法により採取したティッシュサンプルからCsボールを単離し、IP (Imaging Plate) の輝点からカウント分布解析を行ったところ、牛久市で採取した2つのCsボールで、関東地方では報告例が無い不定形のCsボールが飛来した可能性が示唆された。また、カプトンテープによる乾式分離により、前述した不定形のCsボールは可溶性の可能性もあり、これまでに報告されてきたCsボールとは特性が大きく異なる可能性も示唆された。

 そこで私は、採取したサンプルをwet法によりCsボールを単離し、IP (Imaging Plate) の輝点からカウント分布解析、Ge半導体検出器による放射能測定からタイプの分別、そしてSEM-EDS (Scanning Electron Microscopy – Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)を用いて粒子の観察と組成を行うことでCsボールの特性の解明を試みてきた。

 今回は、単離した全てのCsボールの放射能測定を終了し134Cs/137Cs値からTypeの断定、前回の報告時に課題であったカプトンテープに埋まったCsボールの処理、そしてカプトンテープによる乾式分離により増加した輝点スポットのSEM-EDS分析を行った。

 本発表では過去のセミナーで紹介した実験結果を踏まえ、これらの結果について紹介する。

発表者: 仁木 創太

Speaker:Sota Niki

タイトル:完新世火成活動の年代分析

Title: Age determinations on Holocene igneous activities

噴火や地震といった地球科学現象を理解する上で、時間は最も基本的な物理量として不可欠である。地球科学現象が生じる時間間隔や頻度、継続期間といった時間情報を得るためには、研究対象とする現象の時間スケールより細かな時間の目盛りが必要となる。

火山活動の解明には、火山前線の遷移、火山の寿命、噴火の間隔、メルトの注入および冷却固化といった事象に対して時間の目盛りを打つ必要がある。これまでの研究においてその時間の目盛りとしてジルコンから取得したウラン–鉛(U–Pb)年代を用いる試みが行われてきた。

しかしながら、既存のジルコン年代分析を1000年の精度で実施することは困難である。それはジルコンの年代分析がウラン系列の親核種である238Uの濃集に依拠しており、ジルコン結晶化時にその中間生成物である230Thと親核種の238Uとの間に放射非平衡状態が成立してしまうからである。そのため鉱物結晶化時における230Th含有量の不確かさが238U–206Pb年代の不確かさに寄与してしまう。また、その238U–230Th放射非平衡状態の程度から年代分析を行うこともできるが、アイソクロン法を用いることになるため個々の鉱物粒子が有する情報を区別して活用することはできない。したがってジルコン年代に基づき数1000年スケールの噴火間隔やメルトの注入および冷却固化の時間スケールを制約することは困難である。

他にも数千年スケールの年代分析が可能な手法として、炭素年代測定法や幾つかの熱年代学的手法が存在する。ところがそれらを用いても表層過程として反映し得ない地殻内部の事象に対して年代情報を得ることはできない。

そこで本研究では1000年の精度で年代分析するために半減期が1600年の226Raを用いる手法を提案する。226Raは230Thのα壊変で生じ、226Ra/230Thの分析を通じて原理的には数1000年スケールの年代分析が可能である。しかしながらこれまで年代分析の対象とされたジルコンは結晶化時における230Thの含有量が少なく、その壊変で生じる226Raの高精度測定には適していない。そこで発表者は新たにTh濃集鉱物であるモナズ石に着目した。モナズ石は結晶化時に230Thを濃集し、その壊変で生じる226Raをジルコンと比較して数十倍多量に含有する。したがって局所分析法を用いて火山岩から分離した個々のモナズ石粒子ごとに結晶化年代を取得できる。

 これまでの研究で発表者はコリジョンセルを搭載したICP-MS/MSと高速多点方式のレーザーアブレーション法を組み合わせた微量同位体分析法を応用して1から10万年前のジルコン年代取得に成功した。本発表ではこの正確な局所微量同位体分析法を発展させ、モナズ石の年代分析に適用し、これまでの試料より若い完新世火山岩に産するモナズ石の年代分析結果を報告する。