2022年11月25日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, November, 25, 2022 

発表者: 嶋 健皓

Speaker: Takehiro Shima

タイトル: トリディマイト(SiO2)の単結晶X線構造解析を目指した試料合成

Title: Sample synthesis for a single crystal X-ray structure analysis of tridymite (SiO2)

トリディマイトとは石英に代表される、シリカ(SiO2)多形の一つである。また、トリディマイトの中にも多くの多形が存在する。高温条件下でHP、OC、OS、OP、室温条件下でMC、MX-1、PO-nの存在が知られている。貫井と中沢 (1980)によってトリディマイト多形の命名法が体系づけられた。多形は温度領域や晶系、空間群によって分類される。トリディマイトは温度変化に伴って多形の相転移が起こる。トリディマイト多形の結晶構造はSiO4四面体が基本単位であり、それが連結して六員環を形成する。トリディマイトは温度が下がると結晶格子にひずみが生じて対称性が低下することが知られている。しかし、多形の生成条件について、まだ分かっていないことが多くある。加えて各多形の同定を粉末X線回折で行うことは難しいのが現状である。そのため、以下の2点を目的に実験を進める。

①単結晶X線回折で解析可能な、大型の単結晶を育成する方法を探る

②得られた単結晶を用いて、単結晶X線回折で構造決定をする

これまでにトリディマイトの合成と回収試料の評価を行った。SiO2多形の一つである石英と固相反応の触媒として4 wt%または10 wt%の炭酸カリウムを混合させた。混合した粉末を4 mmφでペレット成型し、管状電気炉で加熱した。回収試料がトリディマイトであるかどうかを、光学顕微鏡観察(デジタル顕微鏡と偏光顕微鏡)、ラマン分光法、粉末X線回折で評価した。

SiO2アモルファスを、フラックスとして使うLi2O、V2O5と混合させ、ペレットにして加熱した。回収試料のフラックス部分を硝酸で溶かした。トリディマイトであるかどうかを光学顕微鏡とラマン分光法で評価した。

今回の発表では、トリディマイトの合成と回収試料を評価する方法およびその結果を発表する。また、今後の実験予定についても簡潔に報告する。

発表者: 深川雅央

Spaker: Masao Fukagawa

タイトル:地球化学的リザーバーとしての大陸下マントルの希ガス同位体組成の特徴

Title:Noble gas isotope characterisitics of subcontinental lithospheric mantle as a distinct geochemical reservoir

要旨

研究の背景と目的: マントル対流から隔離され、島弧火成活動などに伴うメタソマティズムも受けている為、対流マントルやプルーム源とは地球化学的なリザーバーとして異なることが期待されるSCLM(大陸下のリソスフェリックマントル)の希ガス同位体組成は不明な点が多い。南米パタゴニアや南アルプスフィネロのSCLM試料について、対流マントルの代表的な試料であるMORB(中央海嶺玄武岩)と比較して核破砕反応起源成分の寄与が強く見られるNe同位体組成が報告された。 このような組成が得られるためにはMORB源に比べてU, Thに富むか、始原的希ガスである22Neが少なくなければならないが、高い3He/22Neが報告されていることを根拠として、メルト抽出に伴う脱ガスでSCLMの始原的希ガスがMORB源と比べて失われている可能性が提案された。 本研究では同様なNe同位体組成が他のSCLMからも確認できるか調べること、及び確認できた場合にその3He/22Neがどのようになっているか確認することを目的とした。

試料と分析手法: 北米南西部Lunar Crater volcanic field(アメリカ、ネバダ州)、Toroweap flow(アメリカ、アリゾナ州)、Mount Emma(アメリカ、アリゾナ州)及びアフリカ北西部Beni Bousera peridotite body(モロッコ)にて採取されたかんらん岩について、真空中で試料を加熱し溶融することで希ガスを抽出し、分離した後に、質量分析計を用いてHe, Ne, Arの存在度及び同位体組成を測定した。加熱分析においてマントル由来の希ガスが十分に含まれていると確認できた試料については段階破砕法で希ガスを抽出し、同様に、分離した後に質量分析計を用いて測定を行った。

結果と考察: 段階破砕分析にて、He同位体比とNe同位体比はMORB的なものからU, Th由来の核反応による寄与を受けていると考えられるものまで幅広い結果が得られ、またこれらの同位体組成の間に関係性が確認できた。特にかんらん岩体の試料については核反応起源成分の寄与が強かったが、これは先行研究にて報告されている地殻変動及び急速な再結晶の結果、始原的な希ガスを失い放射壊変成分由来の希ガスに富んだことを反映していると考えられる。