2023年5月19日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, May, 19, 2023

発表者:村岡賢佑

Speaker: Kensuke Muraoka

タイトル:ACCからアラゴナイトへの結晶化における結晶化経路の解明

Title: Clarification of crystallization pathway in crystallization from ACC to aragonite

生体鉱物として普遍的に存在する炭酸カルシウムには主に、常温常圧で安定相のカルサイト、高温高圧で安定相のアラゴナイト、準安定相のファーテライトが存在する。これらの結晶多形に加えて、生体鉱物の前駆体となる非晶質炭酸カルシウム(Amorphous Calcium Carbonate: ACC, CaCO3・nH2O, n<1.5)が存在する。ACCを結晶化させる報告例として、加熱による結晶化や加圧による結晶化、湿潤条件下での結晶化などがある(Kojima et al., 1993; Yoshino et al., 2012; Xu et al., 2006)。また、ACCをエタノールに分散させてMgCl2水溶液を加える系や、ACCを合成する際にアルコールを加えてから合成する系では、ACCからアラゴナイトが生成するという報告例もある(Zhang et al,, 2012; Sand et al., 2011)。

ACCがアラゴナイトに変換される過程に着目すると、ファーテライトやモノハイドロカルサイト(CaCO3・H2O)といった準安定相を経由するものと、アラゴナイトに直接変換されるものの2つが挙げられるが、ACCからアラゴナイトが生成されるメカニズムについては議論が続けられている。

本研究では、ACCを湿潤条件下および水溶液中でアラゴナイトを含むCaCO3に結晶化させ、その割合や結晶化中の変化を調べた。それをもとに、 ACCからアラゴナイトが結晶化する経路や、

生成するアラゴナイトの定量化を図った。その結果を発表する。

名前:仁木創太
Name: Sota Niki
タイトル:高時間分解能多重検出器型ICP質量分析装置を用いたレーザーアブレーション時に生成される微粒子の個別サイズ・元素分析
Title: Size and elemental analysis of individual particles generated by laser ablation utilizing high-time-resolution multiple-collector ICP mass spectrometry
レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS)を用いて得られる元素分析データの正確性を向上するには、マトリクス合致標準を使用した元素分別効果に対する補正が必要だとされる。これはレーザー照射による破砕や気化および凝縮を経て固体試料が微粒子やガスとして放出されるLA過程において、その素過程で何が起きているかが固体試料の化学組成や材質によって(すなわちマトリクスに依存して)違い得るからである。
本研究では、元素分別効果の本質的な原因およびレーザーアブレーション素過程の解明に向けて、LAにより固体試料表面から放出される微粒子一つ一つを区別してそのサイズ分析および元素組成分析を実施した。個々の微粒子のサイズや化学組成はその形成過程を反映しており、それらのデータはLA素過程の究明に向けた大きな手掛かりとなる。サイズ分析および元素組成分析には複数同位体の同時分析可能な高時間分解能多重検出器型ICP-MS(HTR-MC-ICP-MS)を用いた。微粒子個別分析には微粒子由来の信号の重複を避ける必要があり、ICPへの微粒子導入個数を削減する観点で微小スポットフェムト秒レーザーアブレーション装置(&gt;2 µm)を使用した。分析試料には、先行研究においてZn/Cuの分析結果から顕著な元素分別が報告されている真鍮を使用した。
本研究ではLAにより生成する粒子の個別分析を通じて、LA雰囲気ガス(ArおよびHe)の違いおよびレーザーフルエンスの違いによる粒径分布および元素組成分布の変動を検討した。本発表では特に雰囲気ガスの違いによる元素組成分布の違いを議論し、その背景にある微粒子生成プロセスの差異を考察する。