2023年6月9日

Date: 16:00 – 18:00, Friday, June, 9, 2023

発表者:八木健彦
Speaker:Takehiko Yagi

タイトル:超高圧発生技術の発展の歴史
Title:History of the generation of very-high pressure techniques

本年1月に行ったセミナーでは、地球深部を構成する高圧鉱物がどのようにして明らかにされてきたのかを紹介したが、本セミナーではそれらの研究を可能にした超高圧高温発生技術がどのようにして生み出されてきたのかを解説する。今や地球中心部の360GPa、5000Kといった超高圧高温条件下で精密なX線回折実験を行える実験技術が確立されているが、私自身がこの分野に入った1970年代は10GPa、1000K程度が上限であった。超高圧の発生は、「大きな力を狭い領域に集中して加える」というごく簡単な原理で実現するが、それに基づいて限界を拡大するには多くの研究者のさまざまな努力と工夫があった。その技術的な面に焦点を当てて、歴史と今後の展望について紹介する。

発表者:小杉 周平
Speaker:Shuhei Kosugi

タイトル:多重検出方式のICP質量分析法による高精度第四紀ジルコンとイルメナイト年代測定に向けた検出器の信号応答性の比較 
Title:Precision and Accuracy of the Dating for Quaternary Zircons and Ilmenites : Comparison of Detectors equipped on Multiple Collector ICP Mass Spectrometry 

火山噴火過程やマグマ活動を正確に評価するためには、それらに関する数十万年前より若い地質イベントにおける年代情報の取得が有用である。これまでの研究では、火山噴出物中の斑晶鉱物(e.g.ジルコン、イルメナイト)に対する年代測定が試みられてきており、例えばレーザーアブレーションICP質量分析法を用いた数十万〜十万年前の若いジルコンに対するU–Th年代(Niki et al., 2022)の取得が挙げられる。しかしながら、この測定ではシングルコレクター型のICP-MSを用いており、同位体比の測定には一つの検出器を質量走査させる必要があるため、過渡信号への追跡性能が低く、得られた同位体比の正確性に疑問が残る。さらに、検出器を質量走査させる分イオン検出効率が減少するため、ジルコンよりもウラン濃度の低いイルメナイトのような鉱物を測定する上では感度が不足する。阿蘇カルデラや姶良カルデラのようなジルコンが析出しない火山噴出物に対して年代測定を行うためには、イルメナイトのように噴出物中により普遍的に存在する鉱物に対して年代を取得する必要があり、そのためには、より検出効率の高い測定法の開発が必須である。
そこで本研究では、マルチコレクター型のICP-MSに注目し、この方法を用いた数十万~十万年前のジルコンやイルメナイトに対するU–Th年代の取得を目指すことにした。このような鉱物の年代測定には6–7桁のダイナミックレンジを要するため、複数の検出器を併用する必要がある。今回は、測定に用いる検出器の特性を把握するために、まずガラスの標準物質を用いて各検出器の応答性の比較を行った。その次にその結果を踏まえて標準ジルコンと第四紀ジルコンの230Th /238Uの取得を試みた。本発表ではその結果について報告する。